セミ科

セミ科 (Cicadidae)

セミ科は、カメムシ目頸吻亜目（Auchenorrhyncha）に属するセミ上科を構成する二つの主要な科の一つであり、その中でも最も多くの種を含む大家族です。地球上の多様な環境に約3200種が生息しており、南極大陸を除くほぼ全ての地域でその姿を見ることができます。この科の起源は古く、明確な化石記録は暁新世まで遡ります。白亜紀の琥珀から見つかっている若虫の化石も、この科あるいは近縁のムカシゼミ科に属する可能性が指摘されています。

形態的特徴

セミ科の昆虫は、一般的に他の昆虫と比較して大型です。透明でしっかりとした膜状の翅を二対持ち、飛翔能力に優れています。頭部には、複眼の他に、前方に三角形に配置された三つの単眼が明瞭に確認できます。触角は短く、しっかりとした剛毛に覆われているのが特徴です。これらの特徴が組み合わさることで、セミは独特の外観をしています。

特異な生活環

セミ科の昆虫は、幼虫期を地中で複数年にわたって過ごすという点で、非常にユニークな生活環を持ちます。成虫が地上に姿を現すパターンによって、大きく二つのグループに分けられます。

毎年ゼミ: このタイプのセミは、幼虫が成熟するのに二年以上の期間を要しますが、地域内の個体群の発生時期が完全に同期しないため、成虫は毎年夏になると継続的に出現します。
周期ゼミ: こちらのグループも幼虫期は複数年に及びますが、地域内の個体群の成長サイクルがほぼ同一に進みます。そのため、成虫が一斉に発生する年と、全く姿を見せない年が何年か続くという、周期的な出現パターンを示します。特に北米に生息するMagicicada属の周期ゼミは有名で、13年または17年という長い周期で大量発生することで知られています。

驚くべき音響コミュニケーション

セミ科の昆虫は、その特徴的で響き渡る大きな鳴き声で広く認識されています。この鳴き声は主にオスによって発せられ、遠くのメスを自分のもとに誘い寄せるための重要なシグナルです。セミ科の一種であるBrevisana brevisは、昆虫界で最も大きな音を出す種として記録されており、その鳴き声は100デシベルを超えることもあります。

オスは、状況に応じて異なる四つのタイプの音響シグナルを使い分けます。これには、メスを誘う「歌」（songs）、応答を促す「呼びかけ」（calls）、より近距離でのやり取りに用いると思われる「小さな歌」（low-amplitude songs）、そして危険を感じた際などに発する「撹乱音」（disturbance sounds）が含まれます。

セミ科の発音方法は、コオロギやキリギリスなどのように翅を擦り合わせて音を出す直翅類の昆虫とは根本的に異なります。彼らは、腹部の側面にあるティンバル（tymbal）と呼ばれる、変形した膜組織を用いた特殊な器官で音を出します。オスは、ティンバルに付着する強力な筋肉を収縮させることで、この硬い膜を内側に引き込みます。膜が急激に変形し元の形に戻る際に、「カチッ」という小さなクリック音が発生します。このクリック音が非常に速い速度で繰り返されることで、セミ独特の連続した大きな「鳴き声」が生み出されるのです。

繁殖行動

地中で長い幼虫期を過ごしたセミの幼虫は、地表に出て近くの木などに登り、そこで最後の脱皮を行って成虫となります。羽化を終えたオスは、すぐにメスを探すための大音量の歌を歌い始めます。オスの歌に引き寄せられたメスは、応答の意思を示す際に、自分の翅を軽く打ち合わせて「カチッ」という音を発します。これにより、オスはメスの存在と位置を特定します。一度パートナーとなるメスが見つかると、オスの鳴き声は求愛や交尾ペアであることを示す異なるパターンに変化します。

このように、セミ科の昆虫は、その長い地下での生活、周期的な出現、そして複雑な音響コミュニケーションといった、多くの驚くべき生態的特徴を持つ、興味深いグループです。

分類

セミ科はセミ上科に属し、さらにカメムシ目頸吻亜目（Auchenorrhyncha）の下位に位置づけられます。現在、セミ科内には形態や分子情報に基づいて、少なくとも五つの亜科が認められています。

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