暁新世

暁新世（Paleocene）

暁新世は、約6600万年前から約5600万年前まで続く、新生代で最も古い時代であり、古第三紀の最初の世です。この時代は、恐竜が絶滅した後の地球の生態系が大きく変化した重要な時期です。暁新世は、地質学的な時間区分として、ダニアン期、セランディアン期、サネティアン期の3つに分けられます。

暁新世の環境

気候

暁新世の気候は、白亜紀末期の不安定な状態から徐々に安定しましたが、全体的に高温多湿でした。極地にも氷河はなく、地球全体が温暖な気候に包まれていました。

海陸の分布

大陸の配置も大きく変化しました。超大陸パンゲアの分裂は進み、アフリカと南アメリカが完全に分離し、アフリカと南極大陸も大きく離れました。一方で、ヨーロッパと北アメリカはまだ陸続きの状態でした。インドは孤立した島として北上を続け、他の大陸とは隔絶されていました。南極とオーストラリアは一体でしたが、南アメリカからの分離時期については、白亜紀末とする説と、暁新世に入ってからとする説があり、確定していません。南北アメリカの分離も白亜紀末と考えられていますが、狭い海峡で隔てられていた可能性もあり、その場合は動物の交流が継続していたかもしれません。

暁新世の生物

哺乳類の進化

暁新世は、恐竜が絶滅した後のニッチを埋めるように、哺乳類が急速に進化を遂げた時代です。ただし、この時代の哺乳類はまだ原始的で小型のものが多く、繁栄したグループとしては、原真獣目、髁節目、多丘歯目、霊長目などが挙げられます。原真獣目は、食虫類の仲間であり、暁新世から次の始新世にかけて多様なグループに分化しました。髁節目は、有蹄類（奇蹄目・偶蹄目）の祖先と考えられていましたが、現在では多系統であることが示唆されています。多丘歯目は、白亜紀から生き残った小型哺乳類のグループで、齧歯目の発展とともに衰退し、絶滅しました。霊長目は、北アメリカで発生し、ユーラシア大陸に分布を広げ、さらに始新世にはアフリカにも進出しました。しかし、この時代の霊長類は、現生種につながるものは少なく、多くは絶滅しています。

鳥類の進化

鳥類は、哺乳類よりも早く多様化を完了しており、暁新世には地上性の大型鳥類であるガストルニス（ディアトリマ）のような恐鳥類が出現しました。恐鳥類は、陸生ワニ類（セベクス）などと共に、生態系で重要な役割を果たしました。

植物

植物界では、被子植物が引き続き繁栄し、この時代にはほぼ現代的な植物相が形成されました。

まとめ

暁新世は、恐竜絶滅後の地球の生態系が大きく変化した時代です。哺乳類や鳥類が多様化し、現在の生態系の基礎が築かれました。気候は温暖で、大陸の配置も大きく変化しました。この時代は、地球の歴史において重要な転換期であり、その後の生物進化に大きな影響を与えました。

参考文献

日本地質学会. “地質系統・年代の日本語記述ガイドライン　2014年1月改訂版”.
仲田崇志 (2009年10月29日). “地質年代表”. きまぐれ生物学.

関連項目

地質時代
顕生代
新生代
古第三紀

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