セメント質

セメント質とは

セメント質（セメントしつ、Cementum）は、歯の根部に存在する非血管性の結合組織であり、歯根膜と顎骨をつなぐ役割を果たしています。この硬組織は、歯をしっかりと固定し、咬合圧に耐える重要な役割を担っています。歯は、エナメル質、象牙質、歯髄、そしてセメント質という4つの主要な構成要素から成り立っています。また、セメント質は他の歯周組織と密接に関連し、歯肉、歯根膜、歯槽骨とともに歯を支持する役割を果たしています。

セメント質の構造

セメント質の厚みは歯の位置によって異なり、特に根尖部や歯根分岐部では比較的厚くなります。具体的には、歯頸部では30-60マイクロメートル、根尖部では150-200マイクロメートル程度です。しかし、加齢に伴って厚みが増し、高齢者では歯槽骨と癒着することもあります。

セメント質はおおよそ無細胞セメント質と有細胞セメント質の2種類に分けられます。

• - 無細胞セメント質：これは歯根象牙質の表面に直接覆いかぶさっている部分です。
• - 有細胞セメント質：この部分は歯根の根尖寄りの1/3に位置し、無細胞セメント質を覆っています。

さらに、セメント質は形成過程や細胞の有無、コラーゲン繊維の由来によって、複数の種類に分類されます。具体的には、無細胞固有繊維原生セメント質、有細胞固有繊維第二セメント質、無細胞無繊維セメント質などがあります。

境界部と構造

セメント質とエナメル質の境界は「セメント・エナメル境」、略してCEJと呼ばれ、これは解剖学的な歯頸線と一致しています。歯頸線は、唇側および舌側に関しては歯根側へ凸弯し、近心側および遠心側では歯冠側へたわみます。この境界部では、エナメル質とセメント質は約30％が連続的に結合しており、どちらかが露出している部分も存在します。このセメント質部分は「セメント舌」と称されます。

また、大臼歯領域では、球状のエナメル質塊が存在する場合があり、これは「エナメル滴」と呼ばれます。セメント質と象牙質の境界は「セメント象牙境」として知られています。

加齢変化

セメント質は加齢に伴い、その厚さが増す傾向があります。歯根膜側では新たに形成されたセメント質が年輪のように積み重なっていき、この性質は哺乳類の年齢診断にも利用されています。これを「セメント質年輪法」と呼びます。

成分と機能

セメント質は主に無機質、有機物、水から構成されており、無機質はヒドロキシアパタイトが約60％を占めています。有機質の大部分はコラーゲンであり、特にI型コラーゲンが中心です。他にも、プロテオグリカンや糖タンパク質が含まれています。

セメント質の異常

セメント質にはさまざまな異常が報告されています。例えば、セメント質形成不全やセメント芽細胞腫、骨形成線維腫、家族性巨大型セメント質腫などがあります。また、セメント質における齲蝕（虫歯）やセメント質剥離、さらにはセメント質増殖症なども問題として挙げられます。

このように、セメント質は口腔内で重要な役割を果たす組織であり、加齢や異常によって影響を受ける可能性があります。正しい理解を深め、適切な口腔ケアを行うことが求められます。

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