セルゲイ・スタンケーヴィチ

セルゲイ・ボリソヴィチ・スタンケーヴィチ（Сергей Борисович Станкевич）は、1954年2月25日にモスクワ州シチョルコヴォで生まれた、ウクライナ系のロシア人歴史学者、政治家です。歴史学博士の学位を持っています。

彼のキャリアは歴史研究から始まりました。1977年にレーニン名称モスクワ教育大学史学科を卒業後、1990年以前はソ連科学アカデミー世界史研究所で上級研究員として歴史研究に従事しました。特にアメリカ政治史を専門とし、この分野で30以上の論文や著書を発表しています。1990年には、アメリカ国際リーダーシップセンターから表彰を受けるなど、歴史学者としても一定の評価を得ていました。また、ポーランド語と英語に堪能です。

政治の世界に足を踏み入れたのは1987年、ソ連共産党への入党がきっかけでした。1989年にはソ連人民代議員および最高会議代議員に選出され、最高会議では法制委員会に所属しました。この時期、彼はゴルバチョフ政権の改革に対してさらに急進的な変革を求める地域間代議員グループの一員となりました。1990年3月にはモスクワ市人民代議員ソビエトの副議長に選ばれ、都市レベルでも影響力を持つようになります。

ソ連末期の激動の中で、スタンケーヴィチの役割はさらに大きくなります。1991年8月のソ連8月クーデター発生時、彼はボリス・エリツィン率いる改革派陣営を支持し、ソ連共産党を離党しました。クーデターが失敗に終わった後、彼は歴史的な出来事に関与したと伝えられています。具体的には、国家保安委員会（KGB）本部のあるルビヤンカ広場で、革命家フェリックス・ジェルジンスキーの像を撤去しようとする市民の動きを主導したとも報じられています。さらに、活動停止措置が取られたソ連共産党中央委員会本部の閉鎖と、関連機構の退去を遂行しました。

クーデター後のロシア連邦において、スタンケーヴィチはエリツィン政権内で要職を歴任しました。1991年から1993年にかけてロシア公共政治センター所長を務める傍ら、1991年8月以降はロシア共和国国家顧問として公共政策に関する助言を行いました。1992年には政務担当国家顧問、民族問題担当大統領顧問、政務担当大統領顧問と短期間に複数のポストを経験し、大統領府の政策決定に関与しました。

1993年12月、スタンケーヴィチはロシア連邦議会下院国家会議議員選挙に、穏健改革派政党である「ロシアの統一と合意」から立候補し当選を果たしました。議員として活動する一方で、1995年には法的な問題に直面します。同年4月、検察当局は収賄の容疑で彼の逮捕許可を国家会議に求めましたが、議員の不逮捕特権により逮捕は免れました。

しかし、この疑惑は彼を追いました。1995年11月、スタンケーヴィチは家族とともにロシアを出国しましたが、モスクワ検察庁は彼に逮捕状を発行しました。彼は国際的に追われる身となり、1997年にはポーランドで身柄を拘束されました。しかし、ポーランド政府はロシア当局への引き渡しを拒否し、翌1998年には彼を政治亡命者と認定し、ポーランド国内での自由な滞在を許可しました。この国外滞在中に、1990年に刊行された著書『Неформалы. Социальные инициативы』に関与したとされています。

最終的に1999年11月27日、ロシア国内での告訴が取り下げられたことで、スタンケーヴィチはロシアへの帰国が実現しました。帰国後も政治活動を再開し、2000年には改革派政党である民主ロシアに参加し、党代表を務めました。その後、2001年には右派勢力同盟にも参加するなど、ロシアの政治状況の中で活動を続けました。激動のソビエト末期からロシア連邦初期にかけて、学者から政治家へと転身し、権力の中心で様々な役割を果たした人物と言えます。

もう一度検索