地域間代議員グループ

地域間代議員グループ（Межрегиональная депутатская группа、略称:МДГ）

地域間代議員グループ（МДГ）は、ソビエト連邦の末期にあたる1989年に、新たに発足したソ連人民代議員大会の内部に形成された、民主主義と急進的な改革を志向する議員たちのグループであり、一種の会派として活動した組織である。

その結成の背景には、同年3月26日に実施された第1回ソ連人民代議員大会選挙の結果があった。この選挙では、従来の保守的な共産党の幹部たちが各地で議席を失う一方で、かつて失脚の憂き目にあったボリス・エリツィンがモスクワの選挙区から華々しく当選し、政界に復帰した。また、モスクワなどの大都市部を中心に、ガブリール・ポポフ、アンドレイ・サハロフ、ユーリ・アファナーシェフといった民主派や急進改革派の候補者が多数選出された。彼らは当時のソ連指導者ミハイル・ゴルバチョフが進めるペレストロイカ路線に対し、その歩みが遅いと感じ、さらに抜本的な改革を求めるようになった。こうした思想を共有する当選者たちが集まり、人民代議員大会における活動の拠点として地域間代議員グループを結成するに至ったのである。

グループは1989年6月7日に第1回の集会を開き、組織化の準備を進めた。同年7月29日から30日にかけて協議会が開催され、具体的な運営体制が確立された。この協議会には合計268名の代議員が出席した。運営体制を確立するため、25名のメンバーから成る調整評議会が設けられ、さらに活動を主導する5名の共同議長が選出された。この重要な役割を担ったのは、高名な物理学者で人権活動家のアンドレイ・サハロフ、後にロシア連邦大統領となるボリス・エリツィン、経済学者のガブリール・ポポフ、歴史学者のユーリ・アファナーシェフ、そして法学者のアナトリー・サプチャークといった、当時のソ連における民主化運動の中心的人物たちであった。また、この協議会では、「改革の推進と実行に関するアクション・プログラム」が採択され、今後の活動の指針が示された。

地域間代議員グループの活動は、人民代議員大会において重要な役割を果たした。特に、1989年9月23日と24日の両日にモスクワで開催された第2回協議会では、グループの政策綱領（ブラットフォルマ）が採択され、その改革志向が具体的に示された。彼らが掲げた政策綱領には、当時のソ連体制の根幹に関わる、極めて急進的な要求が含まれていた。

主要な政策綱領は以下の通りである。

ソ連憲法第6条の廃止: ソ連共産党の独裁的地位を憲法で保障していた条項の撤廃は、複数政党制導入への道を開くための最も重要な要求であった。
選挙制度の民主化促進: より公平で開かれた選挙制度の実現を目指した。
民主的報道法の制定: 言論の自由と情報公開を保障するための法整備を求めた。
土地私有制と資産に関する法整備: 社会主義経済の根幹に関わる、私有財産権を認めるための法制度の構築を提案した。
* ソ連の再編: ソ連を構成する各共和国の主権をより尊重し、緩やかな連合体としての「ヨーロッパ＝アジア・ソビエト共和国連邦」への再編を提案するなど、連邦の将来像についても大胆な提言を行った。

これらの政治的、社会的な要求は、開かれた議論が始まった人民代議員大会の場で活発に主張され、従来の体制に疑問を投げかける大きな力となった。彼らの活動は、ソ連共産党内部にも彼らの思想に賛同する者たち（いわゆる民主綱領派）を生み出すきっかけとなり、党内改革の動きを促す一因ともなった。地域間代議員グループは、ソ連末期の政治情勢において、体制内から改革を推し進める重要な役割を担ったのである。

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