セルナ級揚陸艇

セルナ級揚陸艇

セルナ級揚陸艇（セルナきゅうようりくてい）は、ロシア海軍向けに設計された高性能な上陸用舟艇です。この艇は、ロシアのアレクセーエフ水中翼船中央設計局によって開発され、エアー・キャビティ・システム（ACS）と呼ばれる技術が特徴です。このシステムは、船底を囲う圧縮空気膜によって水の抵抗を軽減し、結果として最大30ノットの速度を達成します。

機能と構造

セルナ級の主な機能は、水の抵抗を極限まで減少させることで速度を向上させることです。ACSによって船体の大部分が水に触れないため、移動時の摩擦が少なくなります。また、セルナ級では新たに設計されたウォータージェット推進システム、VVD（Variable Ducted Venturi）を採用しています。従来のプロペラスクリューではなく、インペラを直接取り付ける方式で、これにより船は水流を効果的に利用して推進力を得ます。

建造歴と数量

1994年から2014年にかけて、国内で合計12隻のセルナ級揚陸艇が建造されました。ニジニ・ノヴゴロドのヴォルガ造船所で11隻、ウラジオストクのボストチナヤ造船所で1隻が製造され、その後さらに4隻が輸出仕様として建造されました。これらの輸出艇の一部は、エストニアやアラブ首長国連邦に譲渡されました。

ロシア海軍での運用

2016年時点で、ロシア海軍は以下の艦隊にセルナ級を配備しています。バルト艦隊にはD-67やD-1441などの艇が含まれ、黒海艦隊や太平洋艦隊、カスピ小艦隊にも運用艇が配備されています。特にバルト艦隊には複数の艦番号が確認されており、これらは現在も現役で使用されています。

他国での運用

アラブ首長国連邦に導入されたセルナ級は、軍用に長期間使用されず、1998年には民間に転用されました。また、エストニアへ譲渡された艇は、警察・国境警備隊にて使用されていましたが、2004年にオークションで払い下げられ、現在は海洋プラスチックの回収に使用されています。

実戦参加と影響

特に注目すべきは、2022年に発生したロシアのウクライナ侵攻の際の出来事です。ズミイヌイ島に接岸中のセルナ級は、ウクライナのドローン攻撃を受け、破壊されました。この攻撃は国際的な注目を集め、セルナ級の運用状況や脆弱性に関する議論を引き起こしました。

最後に

セルナ級揚陸艇は、高速移動と効果的な揚陸作戦を可能にする革新的な技術を備えた舟艇です。今後の展望としては、さらなる改良がなされ、より多様な運用が期待されています。軍事的な利用だけでなく、海洋環境保護への貢献も視野に入れた運用が求められる時代です。

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