セルマサウルス

セルマサウルスとは

セルマサウルス（学名: Selmasaurus）は、モササウルス科プリオプラテカルプス亜科に分類される絶滅した海生爬虫類の一属です。アンゴラサウルスやプラテカルプスなどとともに、プリオプラテカルプス亜科に属しています。

独特な頭骨の構造

モササウルス科の多くの種とは異なり、セルマサウルスは頭骨の可動性が非常に低いという特徴を持ちます。一般的なモササウルス科の爬虫類は、方形骨が前後に動く機構と吻部の関節により顎を大きく開けて大型の獲物を捕食することが可能ですが、セルマサウルスにはそのような適応が見られません。この点が、セルマサウルスをモササウルス科の中でも特異な存在にしています。

形態と特徴

セルマサウルスは、全長3～5メートルほどの比較的小型のモササウルス科捕食動物でした。歯の数はモササウルス科の中では比較的少なく、発見当初は最も歯の少ない属とされていました。プリオプラテカルプス亜科に分類されるセルマサウルスは、以下の特徴によって他の属と区別されます。

アブミ骨上の突起が方形骨の高さの約半分まで突出しており、杭状のアブミ骨下突起に接しているものの癒合はしていない。
中央が潰れた半長方形の頭頂部が、前方に向かって広がり、後方に向かって狭まり、末端で分岐する傍矢状隆起を形成している。
頭頂骨の後腹側中央突起が上後頭骨に細長く接している。
上側頭骨の前方中央突起が頭頂骨の枝に圧迫され、その範囲が頭頂骨の枝全体に及んでいる。

発見の歴史

セルマサウルスは、1975年に地質学者サミュエル・ウェイン・シャノンが執筆した修士論文で初めて記述されました。当初は裸名でしたが、1988年に共著者ライトによって正式に記載されました。タイプ標本は、かつてアラバマ州地質調査所に所蔵されていましたが、2005年にアラバマ州自然史博物館に移されました。

ホロタイプは保存状態が良好ではあるものの、関節していない不完全な頭骨、環椎の左神経弓、環椎の椎体、頚椎由来の単一の神経弓で構成されています。保存された頭骨要素には、前頭骨、頭頂骨、左の外翼状骨、左頬骨、上側頭骨、基後頭骨と蝶形骨底部、そして方形骨が含まれます。

種小名のrusselliは、古生物学者デイル・ラッセルのモササウルス科に関する業績を称えて献名されました。S. russelliのホロタイプ標本はアラバマ州西部で発見されましたが、正確な産地は不明でした。その後、1998年に Caitlín R. Kiernan によって、頭蓋底の基部溝からチョーク質の母岩が抽出され、炭酸カルシウムの微小プランクトンの分析から、この標本がセルマ層群ムーアビルチョーク累層のカンパニアン期の地層に由来することが示唆されました。

もう一種の発見

もう一種であるS. johnsoniは、保存状態が非常に良好でほぼ完全な頭骨と頭骨以降の骨格が、カンザス州西部で1996年にスティーブ・ジョンソンとその家族によって発見されました。この標本は、2001年にカンザス州ヘイズのスタンバーグ自然史博物館に収蔵され、10年以上の研究を経て、2008年に新種と断定されました。この発見はセルマサウルスの解剖学的情報をもたらし、プリオプラテカルプス亜科のグループ内での関係性の理解を深めました。また、本属の地理的・時間的な生息範囲も拡大され、プリオプラテカルプス亜科の多様性を示す重要な証拠となりました。

分類

ライトとシャノンは、セルマサウルスをモササウルス科プリオプラテカルプス亜科に分類しました。この亜科には、プラテカルプスやプリオプラテカルプス、エクテノサウルスなどが含まれており、頭蓋底の循環系の形態に基づいて分類されています。セルマサウルスはエクテノサウルスに最も近縁であると考えられていますが、頭骨はエクテノサウルスよりも短く頑丈な形状をしています。

より詳細な分類については、今後の新たな標本発見が待たれます。

プリオプラテカルプス亜科の系統

2011年に小西卓哉とMichael W. Caldwellが行った系統解析に基づくプリオプラテカルプス亜科のクラドグラム（系統樹）が存在します。

まとめ

セルマサウルスは、独特な頭骨構造を持つ興味深いモササウルス科の海生爬虫類です。その発見と研究は、モササウルス科の多様性と進化を理解する上で重要な役割を果たしています。

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