センウセレト3世

センウセレト3世は、紀元前1878年から紀元前1841年にかけて古代エジプトを統治した第12王朝の第5代ファラオです。彼の治世は、しばしばエジプト中王国時代における最も輝かしい時期、すなわち最盛期として位置づけられています。

伝説によれば、センウセレト3世はマネトーの記した歴史書において、その身長が「4キュービット3パーム2フィンガー」に達し、これは現代のメートル法に換算すると2メートルを超える巨躯であったと伝えられています。この記述が真実であるならば、彼はその堂々たる体格をもって、支配者としての威厳を一層際立たせていたと考えられます。

彼の即位時、国内には喫緊の課題が存在していました。父王センウセレト2世は地方を治める州侯（ノマルク）たちに対して比較的寛容な政策を採り、融和的な姿勢を示していました。しかし、その結果として州侯たちの権力が再び増大し、中央の王権に対する潜在的な脅威となりつつあったのです。センウセレト3世はこの状況に断固として対処するため、抜本的な国家制度の改革に着手しました。

彼は、当時のエジプト全土を、北部、南部、そして最南部の三つの主要な地域に分割しました。そして、それぞれの地域に最高位の高官からなる会議を設置し、地方の州侯勢力を統制し、中央集権的な支配を強化する体制を構築しました。この革新的な統治システムは功を奏し、州侯たちの影響力を大幅に削減することに成功しました。これにより国内における地方分権的な力が抑制され、王権のもとでの内政はより安定したものとなりました。

国内の安定という基盤を確立した後、センウセレト3世は対外政策に力を注ぐようになります。特に、ナイル川上流に位置するヌビア地方への遠征は、彼の治世における重要な特徴の一つでした。これらの遠征の主な目的は、新たな交易ルートを開拓し、金やその他の貴重な資源が豊富な採掘地を確保することにありました。彼はまた、ヌビアへの遠征を円滑に進めるため、ナイル川の第一急湍にすでに掘られていた運河を拡張する大規模な工事も行いました。繰り返し行われたこれらの軍事および商業的な遠征は、いずれも成功を収めました。センウセレト3世は、先行するどのファラオにも増して広大な領域をエジプトの支配下に収め、南方の国境線を大きく押し広げた王として歴史に名を残しました。

遠征によってもたらされた莫大な富は、国内各地での建築事業に惜しみなく投じられました。彼は、上エジプトにあるカルナックの北方に位置するメダムードに、戦と豊饒の神メンチュに捧げるための壮麗な神殿を建立させました。さらに、自身の埋葬地として選んだダハシュールには、巨大なピラミッドを建造させました。このピラミッドは、その底辺が約107メートルにも及び、第12王朝時代に建造されたピラミッドの中では最大規模を誇るものです。

治世の後半に入ると、センウセレト3世は息子の名をアメンエムハト3世として、共同統治者に任命しました。これは、父王の存命中に後継者としての経験を積ませ、円滑な王位継承を図るための措置でした。センウセレト3世の死後、アメンエムハト3世が順当に王位を継承し、父の築いた安定と繁栄の時代を引き継ぎました。センウセレト3世の統治は、強力な王権、内政の安定、そして領土の拡大という点において、中王国時代のエジプトの力の象徴とも言えるものでした。

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