セントリー (ロバート・レイノルズ)

セントリー（The Sentry）

ロバート・“ボブ”・レイノルズ、またの名をセントリーは、マーベル・コミックの世界に登場する特異なキャラクターです。彼は比類なき超能力を持つスーパーヒーローであると同時に、自らの力の暗黒面が具現化した恐るべき存在、ヴォイドとしての顔も持ち合わせています。この二つの人格は常にせめぎ合い、セントリーの物語の核心を成しています。創造者はポール・ジェンキンスとジェイ・リーで、リック・ヴィーチもコンセプトに貢献しました。2000年9月1日に刊行されたミニシリーズ『The Sentry』第1号で初登場しました。

創作と出版の経緯

セントリーのアイデアは1990年代後半、ポール・ジェンキンスが抱いた「依存症に苦しみ、愛犬を大切にする強力な男」という着想から生まれました。このコンセプトは、マーベル・コミックの『Marvel Knights』企画へと発展し、ジェンキンスはキャラクターを「監視塔の守護者」として構想し、“セントリー”と名付けました。リック・ヴィーチは、このキャラクターをマーベル・ユニバースの歴史に深く織り込み、時代ごとの異なるアートスタイルで描くことや、何らかの出来事によってセントリーに関する記憶が全ての人から失われるという設定を提案しました。さらに、彼らは現実世界の出版史を模倣し、架空のクリエイター名（フアン・ピンクルス、チック・リヴェット）まで作り上げました。このユニークなコンセプトは、『Marvel Knights』の編集者ジョー・カザーダの目に留まり、ジェンキンス脚本、ジェイ・リー作画によるミニシリーズとして具現化されました。

セントリーは2000年にミニシリーズでデビューし、その後、ファンタスティック・フォー、スパイダーマン、X-メンのエンジェル、ハルクといった著名なヒーローとの共演を描くワンショットシリーズへと展開しました。これらの物語は、セントリーとヴォイドの関係を深掘りする『The Sentry vs. the Void』に繋がります。2005年にはブライアン・マイケル・ベンディスの手によって『ニューアベンジャーズ』の一員として復帰し、その後のマーベルの主要イベントやシリーズ、『マイティ・アベンジャーズ』や『ダークアベンジャーズ』、そして自身のミニシリーズ『The Age of the Sentry』でも重要な役割を担いました。『ダーク・アベンジャーズ』ではレギュラーとして登場し、『シージ』イベントで一度死亡します。2018年にはジェフ・レミアによる継続シリーズが刊行されましたが、短命に終わりました。しかし、2024年には新たなセントリーが登場するなど、キャラクターの系譜は続いています。

キャラクター経歴とヴォイドとの関係

物語の始まりでは、中年太りのボブ・レイノルズとして描かれます。彼は、特別な血清によって「爆発する太陽100万個分の力」を持つセントリーであることを思い出しますが、同時に宿敵ヴォイドの復活を感じ取り、なぜ自身の存在が忘れ去られているのかを探求します。かつてセントリーと関わりのあったエンジェル、スパイダーマン、ハルク、ファンタスティック・フォーといったヒーローたちとの再会を通して、彼らの失われた記憶が蘇ります。調査の結果、レイノルズとリード・リチャーズは、セントリーとヴォイドが同一人物の二つの側面であり、ヴォイドが世界を脅かした際に、レイノルズが自らの記憶を含む地球上のほぼ全ての記憶を消去した事実を突き止めます。ヴォイドとの最終決戦に際し、レイノルズは再び世界から忘れられることを選択します。ミスター・ファンタスティックやドクター・ストレンジの協力により記憶消去は成功しますが、レイノルズ自身が完全に過去を忘れているかどうかは曖昧なまま物語は続きます。その後、妻殺害の容疑で自ら刑務所に収監されるなど、彼の精神的な不安定さは常に描かれます。刑務所からの脱獄事件に巻き込まれたことで、彼は『ニューアベンジャーズ』のメンバーとして活動を再開することになります。

能力とヴォイド

セントリーの能力

セントリーの驚異的な力は、キャプテン・アメリカに使用された血清を改良した、10万倍強力な超人血清に由来します。その正確な能力や限界は不明瞭であり、全能であるとも囁かれます。ヘリキャリアの持ち上げ、セレスティアル・エキサイターの足止め、ソーとの互角の戦い、カーネイジの瞬殺、テラックスの斧の破壊、ドクター・ドゥームのシールド粉砕、ギャラクタスとの膠着といった数々の偉業はその力の片鱗を示しています。通常はその力を抑制していますが、時にはアブソービングマンの能力を飽和させるほどのパワーを発揮します。弾丸を容易く避けたり受け止めたりする超スピード、太陽まで数分で往復できる飛行能力、スパイダーウーマンのヴェノムブラストや太陽フレアに耐える不死身性も持ち合わせ、S.H.I.E.L.D.やアイアンマンでさえ物理的な弱点を見つけられていません。鋭い超感覚により、相手の神経中枢を見たり、遠く離れた蝶の羽音を聞いたりすることも可能です。光やエネルギーの放出、あらゆる源からのエネルギー吸収による無限の供給、手や目からのエネルギー投射、瞬間的なテレポートといった能力も持ちます。精神力も並外れており、他者の心に自身の記憶を埋め込んだり、精神疾患に陥っても力を制御したりします。死亡した妻を触れるだけで蘇生させたこともあります。自己再生能力も極めて高く、太陽の中心で肉体が蒸発しても数秒で元に戻りました。この再生能力は自動的であり、レイノルズやヴォイドの制御を超えているようです。彼の力の起源は謎が多く、モルキュールマンの能力に似ている可能性や、宇宙的あるいは宗教的な源、さらには「死の天使」であるという示唆もあります。原子が僅かに未来に存在するという設定は、時間の流れを彼に有利に歪める可能性を示唆しています。

ヴォイドの能力

ヴォイドはロバート・レイノルズの力の暗黒の側面が具現化した存在であり、実体を投影します。その起源はマスターマインドによるマインド・ウイルスや、レイノルズの真の人格であるという説があります。ヴォイドの戦闘能力はセントリーを凌駕する場面も多く、『シージ』ではソーを圧倒し、アスガルドを崩壊させ、ロキやアレスといった強力な存在をも容易く打ち破りました。ヴォイドは自在に変身でき、影のような姿から巨大なハリケーン、炎、装甲怪物など様々な形態を取り、それぞれの姿に応じた力を発揮します。天候や闇を操り破壊的な嵐を起こしたり、触れた者に過去・現在・未来のトラウマを見せるインフィニ・テンドリルを生み出したりします。夜間やネガティブ・ゾーンでは特に強力になり、ハルクの骨を瞬時に粉砕するなど、単独で多数のヒーローを圧倒できるほどの総合的なパワーを持ちます。

チームと関連キャラクター

セントリーはかつてヴォイドに立ち向かうため、相棒のビリー・ターナー（スカウト）、忠犬ウォッチドッグ、そして女性版セントリーとも言えるジェニー（セントレス）とチームを組みました。スカウトはセントリーと同等の血清由来の能力を持ちますが、セントリーが記憶を消去するたびに能力と普通の生活の間を行き来します。ウォッチドッグは超強力なウェルシュ・コーギー・ペンブロークで、命令に従います。

その他のメディア

セントリーはマーベル・シネマティック・ユニバース（MCU）作品にも登場予定です。2025年公開予定の映画『サンダーボルツ*』で初登場し、ルイス・プルマンが演じます。

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