セント・イシュトヴァーン (戦艦)

セント・イシュトヴァーンについて

セント・イシュトヴァーン（SMS Szent István）は、オーストリア＝ハンガリー帝国海軍が建造したテゲトフ級戦艦の4番艦であり、同級の中で唯一ハンガリーからの資金で建造された艦です。艦名は、中世ハンガリー王国の初代国王であり、聖人でもあるイシュトヴァーン1世に由来します。ドイツ語風に「シュツェント・イストファン」や「スツェント・イストファーン」と表記されることもあります。

建造と特徴

セント・イシュトヴァーンは、ダヌビウス社のフィウメ造船所にて建造されました。当時のフィウメには大型艦艇を建造するための設備がなかったため、船渠の整備から開始する必要があり、多大な費用を要しました。1915年に就役した本艦は、同型艦の先行3隻とはいくつかの点で異なっていました。サーチライトが追加されたほか、前部煙突周囲の甲板が拡大され、前部マストの通風塔が改善されています。また、ボイラーと主機関も他の同型艦とは異なり、推進軸は2軸でした（他の艦は4軸）。さらに、同級の4隻の中では唯一、水雷防御網を装備せずに竣工しました。

艦歴と最期

セント・イシュトヴァーンは、その艦歴の大半を母港であるポーラ近海で過ごしました。しかし、1918年6月10日、オトラント海峡封鎖を突破するためにアドリア海へ進出した際、イタリア海軍のルイージ・リッツォ少佐率いる魚雷艇部隊に捕捉されてしまいます。魚雷艇MAS-15からの雷撃を受け、右舷に魚雷1発が命中。この攻撃により、セント・イシュトヴァーンは程なく転覆し、沈没しました。この沈没で89名の死者が出ましたが、オーストリア・ハンガリー海軍が全ての乗組員に水泳訓練を施していたこと、そして海況が極めて穏やかであったことが、被害を最小限に抑える要因となりました。皮肉なことに、この穏やかな海況こそが魚雷艇の活動を可能にした要因でもありました。

沈没の映像とその後

セント・イシュトヴァーンは、バーラム、アリゾナと並び、沈没する様子が動画として撮影された数少ない戦艦の一つです。この沈没の映像は、赤十字の資金調達活動にも使用されました。

まとめ

セント・イシュトヴァーンは、テゲトフ級戦艦の中でも特異な存在であり、その短い艦歴の中で、歴史に残る劇的な最期を迎えました。沈没時の映像が残されているという点でも、特筆すべき戦艦と言えるでしょう。

参考文献

『世界の艦船』2008年10月増刊（No.697）『近代戦艦史』

外部リンク

Austro-Hungarian Navy
Tegetthoff class dreadnoughts - the primary online source for this topic since 1998 - ウェイバックマシン（2009年9月2日アーカイブ分）
S.M.S. Szent István sinking - YouTube

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