セント・エルモス・ファイアー

『セント・エルモス・ファイアー』（1985年）は、ジョエル・シュマッカー監督による青春映画で、大学卒業後の若者たちの生き様を鮮やかに描いた作品です。エミリオ・エステベス、ロブ・ロウ、デミ・ムーアら、当時を代表する若手俳優たち（ブラット・パック）が出演しており、その豪華なキャスティングも話題を呼びました。

物語の中心となるのは、ジョージタウン大学を卒業したばかりの7人の友人グループ。それぞれが弁護士、ミュージシャン、ジャーナリスト、銀行員など、異なる道を歩み始めますが、卒業という区切りの後、大人としての責任や将来への不安、恋愛、友情など、様々な葛藤を抱えています。

エミリオ・エステベス演じるカービーは、弁護士を目指しながらウェイターとして働き、過去の恋人に未練を抱えています。ロブ・ロウ演じるビリーは、才能あるサックス奏者でありながら、結婚生活に悩み、虚無感を抱えています。アンドリュー・マッカーシー演じるケヴィンは、内向的な性格のジャーナリストで、生きることの意味を模索しています。

デミ・ムーア演じるジュールズは、奔放な生活を送るコカイン常習者で、華やかな外見とは裏腹に、愛情を求めています。ジャド・ネルソン演じるアレックは、野心的な政治家志望で、結婚を迫るも、恋人のレズリーとはすれ違いが生じています。アリー・シーディ演じるレズリーは、アレックの恋人であり、建築家としての成功と、恋愛のバランスに苦悩しています。そしてメア・ウィニンガム演じるウェンディは、裕福な家庭に育ちながらも、自立を望み、内気な性格を克服しようと奮闘します。

彼らを取り巻く環境は、華やかで刺激的な一方で、現実の厳しさや苦悩も描かれています。それぞれのキャラクターが抱える問題や葛藤は、現代の若者にも共感できる普遍的なテーマであり、時代を超えて多くの視聴者の心を掴んでいます。

映画のタイトルにもなっている『セント・エルモス・ファイアー』とは、船乗りの間で語り継がれる、嵐の夜に船の帆などに現れる不思議な光のことです。劇中では、困難な状況を乗り越えていく力強さの象徴として描かれており、若者たちが未来へ向かって進む希望を表現しています。

サウンドトラックも大きな魅力の一つです。カナダの作曲家デイヴィッド・フォスターが手掛けた主題歌「セント・エルモス・ファイアー（マン・イン・モーション）」は、世界的なヒットを記録しました。この曲は、脊髄損傷の運動選手であるリック・ハンセンの活動にインスパイアされたもので、映画のテーマと見事に調和しています。

映画はRotten Tomatoesで48%という評価を受けていますが、1980年代を代表する青春映画として、多くのファンに愛され続けています。また、ABCテレビでコメディドラマ化される計画もありましたが、実現には至っていません。

『セント・エルモス・ファイアー』は、卒業後の若者たちが直面する現実と葛藤、そして友情や恋愛を通して成長していく姿を描いた、感動的な青春映画です。個性豊かな登場人物たちと、魅力的な音楽、そして時代を超えた普遍的なテーマは、多くの視聴者に深い共感を呼び起こすでしょう。

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