脊髄

脊髄の概要

脊髄（せきずい）は脊椎動物における中枢神経系の中心部分であり、脳と体の末梢神経を結ぶ重要な役割を果たします。具体的には、脊椎の中にある脊髄管に存在し、神経細胞（ニューロン）や神経線維が集まっています。脊髄は脳と一体となり中枢神経系の一部とされ、神経根という枝を数多く出して、さまざまな感覚情報や運動信号を伝達します。また、脊髄は運動反射にも関与しています。

脊髄の構造

ヒトの脊髄は、延髄の尾側から始まり、第一腰椎と第二腰椎の間で脊髄円錐として終わり、その先には終糸と呼ばれる細い繊維が繋がっています。脊髄内部は白質と灰白質に分かれています。白質は神経線維が多く含まれ、情報伝達を担い、灰白質は神経細胞体が集まった部分であり、信号伝達を行います。

脊髄はさらに頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄の5つの部分に分かれています。人間では尾髄が退化的であり、脊髄の長さと脊椎の長さは一致しないため、脊髄の最下部から脊髄神経が延びている部分を馬尾（まいび）と呼びます。

脊髄の断面

脊髄の断面は、白質が灰白質を囲む構造を持っています。中央には脳脊髄液で満たされた中心管があります。灰白質はさらに前角、側角、後角に分かれ、各部分で異なる神経細胞が存在します。運動にかかわる神経細胞は脊髄前角にあり、感覚情報は後角で処理されます。また、腰髄と胸髄には交感神経の神経細胞が集まる側角があります。

髄膜

脊髄は3層の髄膜によって保護されています。外側から順に硬膜、クモ膜、軟膜と呼ばれ、これらは大脳や脳幹を包む膜と一体になっています。クモ膜下腔には脳脊髄液が存在し、脊髄を支持する役割を果たします。

感覚系と運動系

感覚系伝導路

脊髄には体性感覚を伝えるための複数の経路があります。触覚や固有覚は後索・内側毛帯路を通じて大脳へ伝わり、温痛覚は脊髄視床路を介して伝えられます。これらの経路では、一次、二次、三次ニューロンが段階的に関与し、情報が伝達されます。特に温痛覚は痛覚と温度をそれぞれ異なる経路で伝え、脊髄から視床を経て大脳に至ります。

運動系伝導路

運動信号は、主に大脳皮質から発せられ、脊髄の運動ニューロンへ伝達されます。これには上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの2つの層があります。上位運動ニューロンの情報は脊髄内で分配され、下位運動ニューロンを介して全身の筋肉の制御を行います。このように、脊髄は運動と感覚の情報を統合して、複雑な動作や感覚処理を可能にしています。

脊髄損傷

脊髄は非常に重要な機能を持つため、損傷を受けると大きな影響を及ぼします。特に頸髄や腰髄が損傷されると、その部位に関連する運動機能や感覚機能が失われ、最悪の場合、呼吸困難を招くこともあります。上位運動ニューロンや下位運動ニューロンの障害では、異なる症状が現れ、運動機能の低下から特定の筋肉の萎縮など多岐にわたります。これらの知識を理解することは、脊髄の健康を維持する上で重要です。

もう一度検索