セントー巡航戦車

セントー巡航戦車：キャバリエの改良型とその運用

第二次世界大戦中、イギリス軍は様々な巡航戦車を戦場に投入しました。その中でも、セントー巡航戦車はキャバリエ巡航戦車の改良型として重要な位置を占めています。本車は、キャバリエの車体と砲塔を踏襲しつつ、変速機とサスペンションに改良を加えることで、信頼性と機動性の向上を目指しました。

開発と生産

セントー巡航戦車の開発は、キャバリエの欠点を克服する必要性から生まれました。特に問題となっていたのは変速機とサスペンションであり、これらの改良はクロムウェル巡航戦車の開発にも繋がっています。セントーは、エンジン以外の主要な構成要素をA27型と共通化することで、コストと生産期間の短縮を図りました。これは、A27M型エンジンを入手すれば容易にクロムウェルへの改造が可能となるという戦略的な側面も持っていました。

試作車は1942年6月に完成し、同年11月には量産が開始されました。最終的には1821両が生産され、その一部はフランスとギリシャへ供与されました。しかし、セントーは戦場での運用において必ずしも成功したとは言えず、その戦闘能力には限界がありました。

派生型と特殊運用

セントーにはいくつかの派生型が存在します。初期型のMk.Iは6ポンド砲を搭載し、主に国内での訓練に使用されました。Mk.IIIは75mm砲を搭載し、火力強化を図ったモデルです。

特に注目すべきは、Mk.IV CS（Close Support）型です。これは95mm榴弾砲を搭載した近接支援型で、イギリス海兵隊装甲支援群がノルマンディー上陸作戦で使用しました。この戦車には、砲塔に大きな白い数字と目盛りが記されており、上陸作戦において独特の運用方法がとられました。上陸用舟艇から直接射撃を行う際、観測員が着弾地点を確認し、目盛りを用いて砲撃角度を修正することで、歩兵部隊を効果的に支援しました。これらのMk.IV CS型の一部は、後にフランスへ引き渡されました。

さらに、砲塔を撤去し、ドーザーブレードを装備したセントー・ドーザーも存在します。これは戦闘工兵車として運用され、パーシー・ホバート少将率いる第79機甲師団で活躍しました。

対空型であるセントーAA Mk.I/IIも開発されましたが、実戦投入されることはありませんでした。これは、クルセーダー対空戦車と似た砲塔構造を持ち、ポールステン20mm機関砲を搭載していました。しかし、車内空間の狭さから無線機と無線手席は車体に移設され、補助エンジンも搭載するなど、設計上の問題を抱えていました。

まとめ

セントー巡航戦車は、キャバリエの改良型として開発され、いくつかの派生型を生み出しました。その運用は多岐に渡り、訓練用から近接支援、戦闘工兵車まで幅広く用いられました。ノルマンディー上陸作戦におけるMk.IV CS型の運用方法は、その特殊性から特に注目に値します。しかし、その戦闘能力には限界があり、戦場での活躍は限定的でした。セントーは、第二次世界大戦におけるイギリス軍の戦車開発の一端を垣間見せる、重要な存在と言えるでしょう。

参考文献

* 『クロムウェル巡航戦車1942‐1950 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ世界の戦車イラストレイテッド)』 デイヴィッド・フレッチャー、リチャード・C. ハーレイ、ピーター・サースン著、篠原比佐人訳、大日本絵画、2007年

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