センピル教育団

センピル教育団と日本の海軍航空技術発展

1921年9月から1923年3月にかけて、イギリス空軍のセンピル教育団が日本海軍の航空技術向上のため来日しました。これは、当時、航空技術において世界をリードしていたイギリスから、日本の海軍航空力を飛躍的に発展させるための重要な取り組みでした。

教育団の派遣と背景

第一次世界大戦後、日本海軍は航空戦力の強化を急務としていました。既に陸軍はフランスから航空技術指導を受けていましたが、海軍はより先進的なイギリスからの指導を必要としていました。この背景には、日英同盟の存在や、イギリスの優れた航空技術への信頼がありました。

ロンドン駐英大使館付武官だった小林躋造少将の働きかけにより、センピル大佐を団長とする29名からなる教育団が編成されました。センピル大佐は、若くして戦功を挙げた優秀な軍人で、後に第19代センピル卿を継承することになります。

霞ヶ浦海軍航空隊での訓練

教育団は、霞ヶ浦海軍航空隊を拠点として訓練を実施しました。イギリスから持ち込まれたグロスター・スパローホークなど約100機の新型航空機を用いて、雷撃、爆撃、艦上機操縦、偵察など、多岐にわたる実践的な訓練が行われました。

特に、イギリスで開発された航空母艦「アーガス」や「ハーミーズ」に関する技術情報は、当時建造中だった日本の航空母艦「鳳翔」の設計に大きく役立ちました。これにより、日本の航空母艦技術は大きく前進することになります。

訓練は厳格に行われましたが、センピル大佐は、教えられた通りに実行できれば、部下を温かく励ます人物でした。

人材育成と技術移転

センピル教育団は、単なる技術指導にとどまらず、日本の海軍航空隊員の人材育成にも貢献しました。優秀なイギリス人教官陣による指導は、日本の航空技術水準向上に大きく寄与し、多くの若手パイロットや技術者が育成されました。

この教育団の活動は、日本の海軍航空力の近代化に大きな転換をもたらしたと言えるでしょう。日本側の講習員たちの熱意と、イギリス側の誠意ある指導が相まって、大きな成果を生み出しました。

臨時海軍航空術講習部

センピル教育団の受け入れにあたり、日本海軍は臨時海軍航空術講習部を編成しました。田尻唯二少将を部長とするこの講習部は、教育団の指導と連携し、日本の航空技術の習得と人材育成を推進しました。

教育団の帰国とその後

1922年11月、センピル大佐は任務を終え、勲三等を授与されて帰国しました。臨時海軍航空術講習部は廃止され、霞ヶ浦海軍航空隊が正式に開隊しました。

センピル卿は帰国後も日本海軍に協力を続け、情報提供などを行っていました。しかし、日英関係が悪化すると、日本のスパイ容疑で取り調べを受けることになります。これは、日英同盟解消後の複雑な国際情勢を反映した出来事でした。

センピル教育団の意義

センピル教育団の日本への派遣は、日本の海軍航空力の近代化に大きな影響を与えました。イギリスの高度な航空技術と指導は、日本の航空技術の発展を加速させ、後の日本の海軍航空力強化の基礎を築きました。同時に、この出来事は、国際関係の複雑さと、技術協力の裏側にある政治的思惑を改めて考えさせる、歴史的な出来事と言えるでしょう。

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