小林躋造

小林躋造

小林躋造（こばやし せいぞう）は、1877年（明治10年）に広島県で生まれ、1962年（昭和37年）に84歳で亡くなった日本の海軍軍人、政治家です。最終階級は海軍大将。

生い立ちと海軍入隊

広島市出身の小林は、旧広島藩士の家に生まれました。福山誠之館中学、修道学校を経て海軍兵学校に入校。入校時、卒業時ともに上位の成績を収め、海軍軍人としての才能を早くから示しました。同期には後に海軍大将となる野村吉三郎がいます。

海軍でのキャリア

小林は、様々な艦艇勤務を経て、「浪速」の砲術長に就任。通常は大尉が就くこの役職に中尉で就任したことからも、その能力への期待の高さが窺えます。日露戦争では、第二艦隊や第三艦隊の参謀として従軍しました。海軍大学校を首席で卒業後、山本権兵衛海軍大臣の秘書官を務め、海軍省での地位を確立しました。

イギリス、アメリカへの駐在を経て、中佐で「平戸」艦長に着任。唯一の艦長経験となります。その後、イギリス大使館附武官として、軍事航空の権威であったウィリアム・センピルと交流を深め、センピルを日本に招聘し、海軍航空隊の教育を依頼。これが後の日本の海軍航空発展に大きく貢献しました。

軍縮問題と政治

帰国後は、軍務局長として軍縮条約遵守の思想を持ち、条約派の重要人物と見なされるようになりました。ジュネーブ海軍軍縮会議では、首席随員として出席。しかし、条約派と艦隊派の対立が激化し、会議は決裂。ロンドン軍縮条約では、条約に反対する艦隊派と対立しつつも、条約を推進したとされています。

統帥権干犯問題で海軍次官が更迭されると、その後任として次官に就任。しかし、艦隊派の勢力が強まり、苦闘を強いられます。次官退任後、連合艦隊司令長官に親補され現場に出ますが、経験不足から図上演習で惨敗。その後、大将に進級するも、軍事参議官となり現場を離れます。

予備役編入と台湾総督

二・二六事件後、陸海軍のバランスを取るため予備役に編入。条約派の粛清という噂が広がりました。しかし、半年後には異例の文官職であった台湾総督に親補されます。台湾の南進基地化と「皇民化」政策を推進しました。

戦時中の活動

日米開戦が迫ると、海軍省書記官の依頼で、岡田啓介、財部彪、米内光政らと協力し、軍令部総長であった永野修身の更迭を画策しますが、これは実現しませんでした。戦時中は、東條英機グループから敵視される一方で、翼賛政治会総裁、小磯内閣の国務大臣を務めるなど、政治の舞台で一定の存在感を示しました。終戦後、戦犯容疑で逮捕されるも、不起訴処分となりました。公職追放後、表舞台から完全に姿を消し、1962年に生涯を閉じました。

人物

小林は、「臍造（へそぞう）」の愛称で呼ばれ、周囲からは親しまれていました。海軍軍人としてのキャリアを積む一方で、政治の世界でも活躍し、激動の時代を生き抜いた人物です。その生涯は、日本の近現代史における重要な一断面を映し出しています。

年譜

1877年（明治10年）：広島県広島市に生まれる
1898年（明治31年）：海軍兵学校卒業
1909年（明治42年）：海軍大学校卒業
1916年（大正5年）：二等巡洋艦「平戸」艦長
1922年（大正11年）：海軍少将
1929年（昭和4年）：海軍省艦政本部長
1930年（昭和5年）：海軍次官
1931年（昭和6年）：連合艦隊司令長官
1933年（昭和8年）：海軍大将
1936年（昭和11年）：予備役編入、台湾総督
1944年（昭和19年）：翼賛政治会総裁、貴族院勅選議員、国務大臣
1945年（昭和20年）：戦犯容疑で逮捕
1947年（昭和22年）：公職追放
1962年（昭和37年）：死去

著作

『海軍大将小林躋造覚書』

参考文献

『貴族院要覧（丙）』
『連合艦隊司令長官 ― 日本海軍実戦部隊の最高指揮官』
『高松宮日記』
『細川日記』
『高木惣吉日記と情報』
『日本の陸海軍の制度・組織・人事』
『海軍兵学校沿革』
『海軍兵学校出身者名簿』
『山本五十六再考』

関連項目

大日本帝国海軍軍人一覧
修道中学校・高等学校の人物一覧
* A級戦犯

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