ゼニゴケシダ

ゼニゴケシダ (Trichomanes tahitense Nadeaud.)

ゼニゴケシダはコケシノブ科に属するシダ植物であり、一見するとコケのように見える非常に特異な植物です。特徴的な形態を有しており、葉の形状や根茎の構造が独特です。

概要

ゼニゴケシダは、細長い根茎が横に這っており、各所から葉を発生させます。一般的にコケシノブ科の植物は小柄で葉が薄く、コケのように見えることがありますが、この植物はその中でも特にユニークです。葉はほぼ円形で、茎の中央部分で接続し、葉の裏面全体が岩などに接着しています。そのため、外観は円形の植物がいくつも岩に張り付いているように見えるのです。名前の「ゼニゴケシダ」は、その見た目がゼニゴケに似ていることから由来しています。

特徴

ゼニゴケシダの根茎は直径が0.8mm程度と細く、横に長く這っています。全体には黒褐色の毛が生えおり、葉は直接茎に接続しているため、葉柄が存在しません。この葉と茎の接続の特徴は「盾状」と称され、通常の葉柄の形とは異なります。この植物の場合、葉は非常に独特であり、葉の端が成長し続けるという特殊な性質を持ち、通常の植物にはあまり見られません。

葉は最大で直径4cmになることもありますが、通常は2cm程度で成長し、初めは淡い緑色から後に深緑色に変わります。また、葉は薄く、少し硬い質感を持っています。その裏面は毛で覆われており、基質にしっかりと接着しているため、またコケのように見える要因となっています。

胞子のう群は葉の縁に位置し、そこから葉脈の先端に向けて胞子を生成します。包膜は杯状で、葉の縁から伸び上がり、先端が大きく開いた形状で、可愛らしいラッパ状をしています。これはコケシノブ科の他の種とも共通の特徴です。

分布

ゼニゴケシダは主に日本の奄美大島以南の琉球列島や小笠原諸島に自生しており、特に八重山などでは比較的普通に見られることが多いです。また、国外ではジャワやタヒチにも分布しています。この植物は主に岩や樹皮に着生し、湿った環境を好むため、特に渓流沿いの岩に生息しているケースが多いです。

近縁種

ゼニゴケシダはマメゴケシダ属に分類されますが、この種特有の特徴は他には見られず、日本にはこの属には他に二種が存在しますが、特に血統が近いわけではありません。苔類との類似性が指摘されることもありますが、本種の特徴的な丸みを帯びた葉の形状は苔類には存在しないため、明確に区別可能です。葉全体に見られる二又分枝した葉脈が、苔類との違いを際立たせています。これらの要素によって、ゼニゴケシダは非常に興味深い植物として知られています。

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