ゼンテイカ

ゼンテイカ（禅庭花）について

ゼンテイカ（禅庭花）は、ユリ科ワスレグサ属に分類される多年草で、一般にはニッコウキスゲ（日光黄菅）の名前で広く知られています。ニッコウキスゲという名前が一般的ですが、植物学的にはゼンテイカが正式な名称です。花期や外見がユリに似ているため混同されることもありますが、分類上は異なる種です。また、地域によって様々な別名があり、エゾゼンテイカ、センダイカンゾウ、ヤマガンピョウ、オゼカンゾウなどとも呼ばれています。

生息地と特徴

主に日本の本州中部地方以北から東北地方の高山地帯に自生しており、標高1000m以上の高原や湿原で見られます。本州では高原が主な生息地ですが、東北地方や北海道では海岸近くでも見られることがあります。関東地方では、低地型のムサシノキスゲや、奥多摩、埼玉、茨城県にも低地型のニッコウキスゲが自生しています。特に、日光の霧降高原、尾瀬ヶ原、霧ヶ峰などは、ゼンテイカの群生地として有名です。

雪解けの季節になると、左右2列に扇形に広がる鮮やかな緑色の若芽を出し、初夏から夏にかけて（5月上旬から8月上旬）開花します。高さ50cmから80cmほどの花茎を伸ばし、その先端に数個の蕾をつけます。花は黄橙色のラッパ状で、直径約10cmほどの大きさで、花弁は見た目6枚ですが、実際には3枚が萼の変化したものです。朝方に開花し、夕方にはしぼむ一日花ですが、ムサシノキスゲは翌日まで開花します。群生する姿は山吹色の絨毯のようで、草原や湿原を美しく彩ります。

分類上の混乱

ゼンテイカは、その分類において多くの変遷を経ています。1925年に小泉らにより H. esculenta とされましたが、その後、大井によってエゾカンゾウの変種とされ、さらに北村らによってヒメカンゾウの変種とされました。また、分子系統学的解析の結果から、H. middendorffii とされることもあります。このように、和名、学名ともに混乱が見られる状況です。

保護状況

ゼンテイカ自体は普通種であり、個体や群落が保護されているわけではありません。しかし、多くの群生地が天然記念物に指定されており、以下のような場所でその美しい群落を見ることができます。

天然記念物・雄国沼湿原植物群落
天然記念物・駒止湿原
特別天然記念物・尾瀬（大江湿原など）
天然記念物・霧ケ峰三湿原（車山湿原、踊場湿原、八島ヶ原湿原）

これらの場所では、ゼンテイカの群生が自然の美しさを際立たせています。

利用

ゼンテイカは、園芸植物としても人気があり、ニッコウキスゲの名前で広く流通しています。花店やホームセンターの園芸コーナーでもよく見かけるようになりました。また、5～6月頃の若芽や蕾は、ヤブカンゾウと同様に食用にできます。おひたし、マヨネーズ和え、辛子和え、煮浸しなどにして食べられ、蕾は熱湯にくぐらせて酢の物やサラダに利用されます。ただし、採取は少量にとどめるべきであり、特に国立公園などでの採取は禁止されています。台湾では、金針または黃花菜の名で食用とされています。

まとめ

ゼンテイカ（ニッコウキスゲ）は、その美しい花姿と食用としての利用価値から、多くの人々に愛されている植物です。分類上の混乱や地域による別名など、様々な側面を持ち合わせていますが、その美しい姿は、日本の自然を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

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