ソニー・レッド

ソニー・レッド（Sonny Red）

ソニー・レッドは、アメリカ合衆国で活躍したハードバップ期の重要なアルトサックス奏者です。本名をシルヴェスター・カイナー・ジュニア（Sylvester Kyner Jr.）といい、時にはソニー・レッド・カイナーとも呼ばれました。1932年12月17日に生まれ、1981年3月20日に48歳という若さでこの世を去りました。彼の演奏は、叙情的な美しい旋律と力強いスイング感を併せ持ったハードバップ・スタイルを特徴としています。

彼の音楽キャリアは、当初C管サクソフォーンを演奏することから始まりましたが、1949年には主要な楽器となるアルトサックスへと移行しました。キャリアのごく初期にあたる1949年から1952年にかけては、著名なピアニストであるバリー・ハリスと共演し、若き才能を磨きました。さらに、1954年には一時的にテナーサックスを手にし、ジャズ史に名を刻むドラマーのアート・ブレイキーや、トロンボーン奏者のフランク・ロソリーノといった重鎮たちとの共演を果たした記録も残されています。この短いテナーサックスでの活動は、彼の柔軟性と多様な音楽性を示唆しています。

1957年にジャズの中心地であるニューヨークへ活動拠点を移してからは、フリーランスのミュージシャンとして精力的に活動を展開しました。この時期、彼は数多くの著名なミュージシャンたちのレコーディングにサイドマンとして参加し、その卓越した演奏で貢献しています。参加したセッションは多岐にわたり、クリフォード・ジョーダン、ポール・クイニシェット、ユセフ・ラティーフ、トミー・フラナガン、そしてカーティス・フラーといった錚々たる顔ぶれと共に名を連ねています。特に、ドナルド・バードがブルーノートに残した一連の作品群（『ムスタング』『ブラックジャック』など）や、カーティス・フラーのプレスティッジ録音にも彼のアルトサックスを聴くことができます。

サイドマンとしての活躍に加え、ソニー・レッドは自身のリーダーとしても優れた作品を残しています。特に1950年代後半から1960年代にかけて、いくつかの重要なリーダー・アルバムを発表しました。これらの作品では、シダー・ウォルトン、ジョージ・タッカー、ジミー・コブ、ブルー・ミッチェルといった実力派ミュージシャンをバックに迎え、彼自身のリーダーシップと演奏スタイルを存分に披露しています。また、ギタリストのグラント・グリーンや、初期からの盟友であるバリー・ハリスとは、ブルーノートやジャズランドといったレーベルで複数の名盤を共に制作しました。テナーサックスのアート・ペッパーとの双頭コンボによる『トゥー・アルトス』(1957年)や、ブルーノートに残した『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1960年)、グラント・グリーンやバリー・ハリスとの共演盤『ザ・モード』『イメージズ』(ともに1961年/1962年)などは、彼のリーダー作の中でも特に高く評価されています。

ソニー・レッドの音楽は、当時のハードバップシーンにおいて、その旋律美と揺るぎないスイング感によって独特の輝きを放っていました。派手さよりも、洗練されたフレージングと深い情感に富んだ表現で聴衆を魅了しました。残念ながら40代での早すぎる死により、そのキャリアは中断されましたが、彼が残したリーダーアルバムや数多くのサイド参加録音は、ハードバップ期におけるアルトサックスの重要な遺産として、現在も多くのジャズファンに聴き継がれています。

以下に、主要なリーダーアルバムと参加アルバムの一部を記します。

リーダー・アルバム

『トゥー・アルトス』(Two Altos) (1957年、Regent) ※アート・ペッパーとの共演
『アウト・オブ・ザ・ブルー』(Out of the Blue) (1960年、Blue Note)
『ブリージング』(Breezing) (1960年、Jazzland)
A Story Tale (1961年、Jazzland) ※クリフォード・ジョーダンとの共演
『ザ・モード』(The Mode) (1961年、Jazzland) ※グラント・グリーン、バリー・ハリス参加
『イメージズ』(Images) (1962年、Jazzland) ※グラント・グリーン、バリー・ハリス参加
『ソニー・レッド』(Sonny Red) (1971年、Mainstream)

参加アルバム

カーティス・フラー: 『ニュー・トロンボーン』(New Trombone) (1957年、Prestige)
ポール・クイニシェット: 『オン・ザ・サニー・サイド』(On the Sunny Side) (1957年、Prestige)
ドナルド・バード: 『ムスタング』(Mustang!) (1966年、Blue Note)
ドナルド・バード: 『ブラックジャック』(Blackjack) (1967年、Blue Note)
ユセフ・ラティーフ: The Blue Yusef Lateef (1968年、Atlantic)

彼の作品は、ハードバップのエッセンスを捉えつつ、独自のメロディセンスが光るものであり、今なお新鮮な魅力を放っています。

もう一度検索