ソフトウェア構成管理(SCM、Software Configuration Management)は、
ソフトウェア開発プロジェクトの成果物を効果的に管理し、開発プロセス全体を制御するための体系的な方法論です。ソースコード、ドキュメント、設定ファイルなど、あらゆる開発資産の変更履歴を正確に追跡し、特定のバージョンを容易に復元できるようにします。これにより、開発チームは連携を強化し、バグ修正や機能追加といった変更をスムーズに管理することが可能になります。
SCMの進化:歴史を振り返る
SCMの起源は、ハードウェア開発における
構成管理(CM)に遡ります。初期のSCMは、主に
メインフレームシステム上で運用されるシンプルなツールが中心でした。その後、
UNIXの登場やインターネットの発展に伴い、SCMツールは飛躍的に進化を遂げます。
主な歴史的マイルストーンは以下の通りです。
初期(1950~1970年代): IBM UPDATE、CDC update、UNIXのmakeなどのツールが登場し、主にファイルの変更管理やビルドプロセスの自動化に焦点を当てていました。この時代には、Leon Pressorによる画期的な研究論文も発表され、SCMの基礎理論が構築されていきます。また、SCCS(Source Code Control System)やRCS(Revision Control System)といった、初期のバージョン管理システムが開発されました。
発展期(1980~2000年代): patchユーティリティやCVS(Concurrent Versions System)といった、より高度な
バージョン管理システムが開発され、分散開発への対応も進みました。
分散型SCMの台頭(2000年代以降): BitKeeperやGit、Mercurialなどの分散型バージョン管理システムが普及し、開発チームの規模や地理的な分散に対応できるようになりました。これらのシステムは、ブランチ機能やマージ機能を強化し、柔軟な開発ワークフローを実現しています。
SCMにおける主要な用語
SCM関連の用語は多岐に渡り、ツールベンダーや研究者によって解釈が異なる場合があります。代表的な用語として以下が挙げられます。
Software Configuration Management (SCM):最も一般的な用語です。
Software Change and Configuration Management (SCCM):変更管理も含めた広義のSCMを指す場合もあります。
Version Control:
バージョン管理システムを指す用語で、SCMの一部と考えることができます。
Revision Control、Source Control:バージョン管理、ソースコード管理を意味する同義語です。
これらの用語は、文脈によって意味合いが変化するため、注意が必要です。
SCMの目的
SCMの主要な目的は、ソフトウェア開発におけるリスクを軽減し、製品の品質向上と開発効率の改善を図ることです。具体的な目的は以下の通りです。
構成の明確化: 開発対象物の範囲を明確に定義します。
変更の追跡: すべての変更を記録し、誰がいつどのような変更を加えたかを追跡します。
バージョンの管理: 各バージョンを識別し、必要に応じて過去のバージョンに戻すことができます。
リリース管理: 新しいリリースを作成し、配布するプロセスを管理します。
チームワークの促進: 開発チーム間の協調を促進し、効率的な開発を支援します。
障害の追跡: バグや問題を管理し、修正状況を追跡します。
ビルド管理: ソースコードから実行可能な
ソフトウェアを構築するプロセスを管理します。
SCMツール:PUSH型とPULL型
SCMツールには、大きく分けてPUSH型とPULL型があります。
PUSH型: 構成管理ツールから機器へ設定をプッシュする方式で、機器側に特別なエージェントプログラムは不要です(エージェントレス)。
PULL型: 設定対象の機器が
構成管理ツールから情報を取得し、自身を設定する方式で、機器側にエージェントプログラムが必要です。外部エージェント方式も存在します。
参考文献
Berczuk, Appleton; (2003). Software Configuration Management Patterns: Effective TeamWork, Practical Integration (1st ed.). Addison-Wesley. ISBN 0-201-74117-2.
ステファン・P・バーチャック(著)、ブレッド・アップルトン(著)、宗雅彦(訳)『パターンによる
ソフトウェア構成管理』、翔泳社、2006年、ISBN 9784798112596
関連情報
変更管理 (ITシステム)
バージョン管理システム
* ビジネステクノロジー最適化