ソユーズ10号

ソユーズ10号

ソユーズ10号（Soyuz 10）は、ソビエト連邦が運用した有人宇宙船であり、人類初の宇宙ステーションである「サリュート1号」への最初のドッキングを試みるという重要な使命を担いました。このミッションは、将来の長期滞在型宇宙ステーション運用の可能性を探る上で、極めて意義深い第一歩となるはずでした。

ミッション遂行

1971年4月23日、ソユーズ10号はバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。搭乗したのは、ベテラン宇宙飛行士のウラジーミル・シャタロフ（3回目の飛行）、アレクセイ・エリセーエフ（3回目の飛行）、そしてこれが初の宇宙飛行となるテストエンジニア、ニコライ・ルカビシュニコフの3名でした。

宇宙船は無事、軌道上に到達したサリュート1号とのランデブーを成功させ、ドッキング操作に入りました。物理的にはサリュートへ結合することには成功したものの、肝心のドッキング機構に問題が発生し、宇宙飛行士たちが安全にステーション内部へ移動できる状態にはなりませんでした。さらに悪いことに、ソユーズのドッキングプローブがサリュートのポートから抜けなくなり、宇宙船がステーションから切り離せないという予期せぬ事態に直面しました。乗員たちは困難な状況下で懸命に作業を行い、最終的にはソユーズ宇宙船をサリュートから切り離すことに成功しました。

しかし、問題はそれで終わりませんでした。地球への帰還に向け大気圏に再突入する際、ソユーズカプセル内部に未知の有毒ガスが流入するという、新たな危機が発生しました。このガスによって、搭乗員のニコライ・ルカビシュニコフは一時的に意識を失う状態に陥りました。緊迫した状況の中、カプセルは現在のカザフスタン共和国にあるカラガンダ市の北西約120kmの地点に無事着陸しました。地上に降り立った後、宇宙飛行士3名は速やかに回復し、その命に別状はありませんでした。

搭乗員

ソユーズ10号ミッションに参加した主要な搭乗員は以下の3名です。

コマンダー: ウラジーミル・シャタロフ (3度目の宇宙飛行)
フライトエンジニア: アレクセイ・エリセーエフ (3度目の宇宙飛行)
テストエンジニア: ニコライ・ルカビシュニコフ (初の宇宙飛行)

このミッションには、彼らの他にも支援搭乗員と予備搭乗員が任命されていました。

支援搭乗員:
コマンダー: アレクセイ・レオーノフ
フライトエンジニア: ワレリー・クバソフ
テストエンジニア: Pyotr Kolodin
予備搭乗員:
コマンダー: ゲオルギー・ドブロボルスキー
フライトエンジニア: ウラディスラフ・ボルコフ
テストエンジニア: ビクトル・パツァーエフ

予備搭乗員に名を連ねたドブロボルスキー、ボルコフ、パツァーエフの3名は、次期ミッションであるソユーズ11号に搭乗し、サリュート1号への滞在を成功させることになります。

ミッション諸元

ソユーズ10号の基本的なミッションに関する技術データは以下の通りです。

重量: 約6800 kg
初期軌道（公称値）:
近地点: 209 km
遠地点: 258 km
軌道傾斜角: 51.6度
* 周期: 89.1分

ソユーズ10号のミッションは、その主要な目標であったサリュート1号への入室と滞在には至りませんでしたが、宇宙ステーションとのランデブーおよびドッキングに関する貴重なデータと経験をもたらしました。この失敗から得られた教訓は、ソ連およびその後のロシアにおける宇宙ステーション開発と運用、特にドッキングシステムの改良に不可欠なものとなり、続くソユーズ11号ミッションの成功へと繋がっていくことになります。また、帰還時の有毒ガス問題は、宇宙船の生命維持システムにおける安全性についても重要な課題を提起しました。ソ連の宇宙開発チームに突きつけました。

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