ソユーズ14号

ソユーズ14号：初の宇宙ステーション有人ミッション（1974年）

1974年に実施されたソユーズ14号ミッションは、ソビエト連邦にとって宇宙開発史における重要な一歩となりました。これは、ソ連が打ち上げた宇宙ステーション「サリュート3号」への有人滞在を目指した初めての飛行であり、その目的は軍事的な性質を帯びた「アルマース計画」の一環として位置づけられていました。当時のソ連政府は、このミッションの内容や、宇宙ステーションそのものの詳細を厳重に機密としており、その全貌はすぐには明らかにされませんでした。

ミッションを担った宇宙飛行士と宇宙船

ソユーズ14号には、ベテラン宇宙飛行士のパーヴェル・ポポーヴィチ氏が船長として搭乗し、フライトエンジニアとしてユーリー・アルチューヒン氏が初の宇宙飛行を行いました。彼らを乗せたソユーズ宇宙船（質量は約6,800kg）は、近点195km、遠点217km、軌道傾斜角51.6度、軌道周期88.6分という軌道パラメータで飛行しました。

バックアップクルーとしては、ゲナジ・サラファノフ氏（船長）とレフ・デミン氏（フライトエンジニア）が、リザーブクルーにはボリス・ヴォリノフ氏（船長）とビタリー・ジョロボフ氏（フライトエンジニア）が選ばれていました。

宇宙への旅立ちとドッキング

サリュート3号宇宙ステーションは1974年6月24日に軌道に投入され、その9日後の7月3日にソユーズ14号が打ち上げられました。宇宙船は翌日にはサリュート3号に接近し、ドッキングを試みました。最終的な約100mの接近は手動操縦で行われ、無事にドッキングを成功させました。

軌道上での任務内容

軌道上で、乗組員たちはサリュート3号が軍事偵察プラットフォームとしてどれほど有効であるかを評価するための試験を行いました。また、「アルマース計画」に関連する太陽電池アレイなどの主要な機器の機能試験も実施されました。

ミッション期間中、太陽活動が増加したことで放射線レベルの上昇が懸念されましたが、評価の結果、安全限度内であることが確認され、任務は続行されました。ソ連が公式に発表した実験には、宇宙環境が人体に与える影響に関する医学研究（心臓や循環器系の機能、頭蓋内圧の変化、血液組成のモニタリング、肺活量や呼吸比率の測定など）や、ステーション内の空気中の水蒸気を凝縮させて飲料水を得る浄水システムの性能試験などが含まれていました。

しかし、これらの報告された科学実験に加え、非公開の軍事的な活動に多くの時間が費やされたと広く推測されています。高性能な高解像度カメラが搭載されており、バイコヌール宇宙基地に保管されていたという主張もあり、偵察活動が主な目的の一つであった可能性が示唆されています。

宇宙での長期滞在における健康維持のため、宇宙飛行士たちは毎日2時間の集中的な運動を欠かさず行いました。この努力により、ミッション最終日の7月19日に地球へ帰還した際、彼らは自力でソユーズの降下モジュールから立ち上がることができたとされています。

ミッションの完了とその後のサリュート3号

ソユーズ14号は1974年7月19日に地球に無事帰還し、16日間のミッションを成功裏に終えました。乗組員は、次にサリュート3号を訪れる可能性のある長期滞在クルーのために、約6ヶ月間生活できる十分な補給品をステーションに残しました。

しかし、その後のサリュート3号の運命は、ソユーズ14号がこのステーションを訪れた最初で最後の有人ミッションとなることを決定づけました。1974年8月には、後続のソユーズ15号がサリュート3号とのドッキングに失敗。さらに、1975年1月にはサリュート3号自身が軌道を離脱し、大気圏に突入しました。

ソユーズ14号の飛行は、アメリカのスカイラブ計画が完了した後の時期に行われました。1975年のアポロ・ソユーズテスト計画という例外を除けば、このソユーズ14号以降、1981年にアメリカのスペースシャトルが初飛行するまでの間、ソ連が一時的に有人宇宙飛行の分野で主導的な役割を果たすことになります。ソユーズ14号は、ソ連の有人宇宙ステーション開発における最初期の成功事例として、その歴史に名を刻んでいます。

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