頭蓋内圧

頭蓋内圧についての詳説

頭蓋内圧（Intracranial Pressure, ICP）は、脳内の圧力を指し、特殊な医療機器によって正確に測定されます。通常、脳圧あるいは脳髄液圧とも呼ばれるこの圧力は、身体が自己調整するホメオスタシスの影響を受け、通常は極めて安定した範囲に保たれています。しかし、何らかの要因で変動すると、重大な病状を引き起こす可能性があります。

正常範囲

頭蓋内圧の正常値は、立位で-5.9～8.3 mmHg、仰臥位で0.9～16.3 mmHgとされています。中枢神経系は、頭蓋骨及び脊椎によりほぼ完全に密閉された状態を保っており、脳や脳脊髄液、血流の容積が変化すると、他の成分の容積を調整することで内圧を一定に保ちます。ホメオスタシスが限界に達すると、頭蓋内圧が異常に変動し、さまざまな病状を引き起こします。

低下の原因

頭蓋内圧が低下する原因には原発性低髄圧症や頭部外傷、脊髄損傷などがあります。また、医療行為に起因するもので、腰椎穿刺や脊椎麻酔後に髄液が漏れ出すことによっても低髄圧が引き起こされます。このような状況では、管理ミスが重大な問題を引き起こし、急激な低下が致命的な結果をもたらすこともあるため、注意が必要です。

亢進の原因

一方、頭蓋内圧が上昇する場合は、脳出血や頭部外傷、脳腫瘍、髄膜炎、神経毒による中毒などが考えられます。これらの疾患は、治療を行わなければ生命を脅かす結果となります。特に、頭蓋内圧が異常に亢進すると、脳ヘルニアを引き起こし、呼吸麻痺や心停止を伴う致命的な状況に進展する危険性があります。

測定方法

頭蓋内圧の測定には、頭蓋骨直下に圧電センサーを挿入する方法や、側脳室にチューブを挿入して水柱の圧を測定する脳室ドレナージが用いられます。後者の方法は、臨床現場での使いやすさを考慮して採用されていますが、どちらの方法も患者に対して高い侵襲度があり、絶対安静を必要とします。

異常の症状

頭蓋内圧の異常が出現すると、様々な自覚症状が現れます。

• - 頭痛: 特に早朝に感じることが多く、横になった際に強くなることがあります。
• - 嘔吐: 嘔気を伴うことが多いですが、なしに突然生じることもあります。
• - 視力障害: 初期段階ではあまり自覚されませんが、持続すれば失明することもあり得ます。
• - 複視: 外転神経や動眼神経が麻痺することから起こりやすいです。

治療法

頭蓋内圧が上昇した際には、原疾患の治療を行いつつ、優先して内圧の低下を図る必要があります。内科的な治療としては、浸透圧性利尿剤やマンニトールなどが使われます。また、外科的な方法として脳室ドレナージや頭蓋切除術（開頭減圧術）が検討されることがあります。

まとめ

頭蓋内圧は脳の健康を支える重要な要素であり、その異常が示唆する病態を理解することが必要です。医療においては、適切な検査と迅速な対応が何よりも重要となります。

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