ソユーズ21号

ソユーズ21号ミッションの概要

1976年、ソビエト連邦は有人宇宙船ソユーズ21号を打ち上げました。これは、同年6月22日に軌道投入された、主に軍事目的として開発された宇宙ステーション「サリュート5号」を訪れる最初の有人ミッションでした。科学的な探査も計画に含まれていましたが、その根幹は軍事色の強いものでした。

ソユーズ21号には、2回目の宇宙飛行となるボリス・ボリノフ船長と、これが初の宇宙飛行となるビタリー・ジョロボフ飛行士が搭乗しました。ミッションのバックアップクルーはヴャチェスラフ・ズードフとワレーリ・ロズデストベンスキー、リザーブクルーはヴィクトル・ゴルバトコとユーリ・グラズコフが務めました。

ソユーズ21号のミッションパラメータは以下の通りです。

質量: 6,800 kg
近点: 246 km
遠点: 274 km
軌道傾斜角: 51.6°
* 軌道周期: 89.7分

サリュート5号での活動

ソユーズ21号はサリュート5号打ち上げから14日後の1976年7月6日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。乗組員は翌日にはステーションとドッキングを成功させ、7月8日にはステーション内部をテレビ中継で紹介しました。当初、このミッションは着陸の機会を考慮し、55日から66日間の長期滞在を予定していたと見られています。

ステーション滞在中、乗組員は様々な任務を遂行しました。特に重要な目的の一つは、サリュート5号が軍事計画「アルマース」の一部として持つ監視能力を評価することでした。滞在期間中、シベリアで行われた大規模な軍事演習と連携し、軌道上からの観測を実施しました。

軍事目的が主でしたが、科学実験や技術試験も行われました。具体的には、宇宙空間での結晶成長実験や、太陽の観測、水槽内の魚の観察などが行われました。また、将来の無人補給船プログレスへの応用を見据えた燃料移送システムの試験も実施されました。広報活動としては、8月17日に学校の子供たちとのテレビ交流も行われています。

予定外の早期終了

順調に進んでいるかに見えたミッションは、突然の幕引きを迎えます。1976年8月24日、モスクワ放送の記者さえ驚くほど急な形で、ミッションがわずか10時間以内に終了することが公表されました。これは、当初予定されていた期間を大きく下回る、わずか49日間の滞在でした。

早期終了の理由に関する議論

ソユーズ21号ミッションがなぜこれほど早期に打ち切られたのか、その正確な理由については、現在も多くの説が唱えられ、議論の的となっています。当時の公式発表に近い報道では、サリュート5号内の環境制御システムから不快な異臭が発生し、乗組員が緊急脱出を余儀なくされたためとされました。この問題は8月17日頃から発生していたと言われています。ソ連当局は当時詳細なコメントを避けましたが、後にサリュート5号を訪れたソユーズ24号の乗組員が呼吸マスクを着用したことから、空気汚染への懸念が大きかったことがうかがえます。

しかし、その後、複数の異なる見解が浮上しました。一つは、ビタリー・ジョロボフ飛行士の健康状態が悪化したためというものです。この健康問題の原因としては、サリュートの推進剤タンクから漏れた硝酸の蒸気を吸い込んだ可能性や、計画された運動を怠り、睡眠不足に陥ったことなどが示唆されました。

さらに、アメリカ航空宇宙局（NASA）がロシア連邦宇宙局の心理学者からの情報として報告した内容では、ミッションが途中で終了したのは、乗組員であるボリノフ船長とジョロボフ飛行士の間で「詳細不明の対人関係の問題」が発生したためであるとも言及されています。これらの様々な説が混在し、単一の明確な原因は特定されていません。

地球への困難な帰還

ミッションの早期終了に伴い、乗組員はソユーズ21号に乗り移って帰還準備を進めました。しかし、サリュート5号からのドッキング解除の際に予期せぬトラブルが発生します。ボリノフ船長はドッキング機構のラッチを解除しようとしましたが、うまくいきませんでした。宇宙船を分離するために推力をかけたものの、ドッキング機構が引っかかり、ソユーズはステーションから離れることができませんでした。

地上管制局との通信圏外に出る直前、乗組員は緊急手順の一部を受け取りましたが、ドッキングは解除できませんでした。再度解除を試みましたが、ラッチはわずかに緩んだだけでした。乗組員が通信圏内に戻り、緊急手順の残りの部分を受け取って最終的にラッチを解除できたのは、軌道を一周し、約90分が経過した後でした。

予定外の早期帰還となったため、ソユーズ21号の着陸は通常の降下軌道から外れました。地球大気圏への再突入、降下中に強い横風に見舞われたソユーズは、機体の制御を保つため、逆推進ロケットを非対称に点火することを余儀なくされました。その結果、着陸は非常に荒い「ハードランディング」となり、現地時間のほぼ真夜中に、カザフスタンのコクシェタウ南西約200kmの地点に着陸しました。

ミッションの遺産

ソユーズ21号ミッションでの空気汚染や乗組員の健康問題への懸念は、後続のミッションに影響を与えました。特に、次にサリュート5号を訪れたソユーズ24号のミッションでは、汚染された空気を宇宙空間に排出し、新たな空気を入れ替えるという措置がとられました。ソユーズ21号の経験は、長期宇宙滞在における乗組員の健康管理、精神状態、そして船内環境の重要性を改めて浮き彫りにしました。

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