ソユーズ34号

ソユーズ34号は、1979年にソビエト連邦が実行した宇宙飛行計画の一環です。このミッションは、通常の有人宇宙輸送というよりは、緊急の状況に対応するための特別な役割を担っていました。

その背景には、1979年4月に発生したソユーズ33号の深刻な事態がありました。ソユーズ33号は、宇宙ステーション「サリュート6号」へのドッキングを目指しましたが、主エンジンの異常に見舞われ、ドッキングを断念し、危うく地球へ緊急帰還しました。この失敗は、サリュート6号に長期滞在していたウラジーミル・リャホフ飛行士とワレリー・リューミン飛行士の安全に直結する問題を引き起こしました。

彼らが宇宙ステーションへ到着するために使用したソユーズ32号も、ソユーズ33号と同じ型のエンジンを搭載していたからです。もしソユーズ32号のエンジンも故障すれば、彼らは地球へ帰還する手段を失ってしまいます。この危機的状況を回避するため、信頼性の高い帰還船を彼らに届ける必要が生じました。

当初、ソユーズ34号はハンガリーとソ連の宇宙飛行士を含む2人乗りの有人ミッションとして計画されていました。このミッションでサリュート6号へ向かい、彼らはソユーズ33号（当時はまだ失敗前）で帰還する予定だったと考えられています。しかし、ソユーズ33号の事故を受けて、この計画は大幅な変更を余儀なくされました。

新たな計画では、ソユーズ34号は無人のままサリュート6号へ向かい、滞在クルーのための新しい帰還船となることになりました。ソユーズ33号で問題となったエンジンの改修が施され、ソユーズ34号は改良型エンジンの初の飛行試験という側面も持ちました。このエンジンの信頼性確保は、今後の宇宙ステーション運用において極めて重要でした。

1979年6月6日、ソユーズ34号は無人でバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。そして、6月9日にはサリュート6号の後方ドッキングポートに無事結合しました。この無人飛行によるドッキングと、その後のエンジンの地上試験データとの照合によって、新しいエンジンの安全性が確認され、リャホフ飛行士とリューミン飛行士は確実な帰還手段を得ることができました。機体には、宇宙での生物学実験に用いるサンプルなども積載されていました。

一方で、役目を終えたソユーズ32号は、宇宙飛行士2名分の体重に相当する約6,800kgの質量の一部として、約130kgの実験機器や資材、フィルムなどを搭載し、6月13日にサリュート6号から分離しました。そして、ジェズカズガンの北西約295km地点に無人のまま正確に着陸し、機体は良好な状態で回収されました。翌日、6月14日には、ソユーズ34号はプログレス補給船が後方ポートを使用できるように、前方ポートへ移動しました。

リャホフ飛行士とリューミン飛行士は、ソユーズ34号が届けられたことで安心して長期滞在ミッションを継続しました。そして、1979年8月19日、彼らは合計175日間に及ぶ宇宙滞在を終え、ソユーズ34号に乗り込んで地球へ帰還しました。これは、1978年のソユーズ29号クルーが樹立した139日間の記録を大幅に更新する、当時の宇宙滞在最長記録でした。

ソユーズ34号ミッションは、技術的なトラブルに迅速に対応し、宇宙空間にいるクルーの安全を最優先したソビエトの宇宙開発における重要な事例となりました。無人の救助船として、サリュート6号での長期ミッションを成功裏に完遂させる上で不可欠な役割を果たしたのです。

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