プログレス補給船

プログレス補給船：宇宙ステーションを支える無人輸送船

プログレス補給船は、宇宙ステーションへの補給を目的として開発されたロシアの無人貨物輸送宇宙船です。ソユーズ宇宙船の技術を基に設計されており、ソユーズロケットで打ち上げられます。現在では国際宇宙ステーション（ISS）への補給に不可欠な存在となっています。

概要

プログレスは無人機ですが、ISSにドッキングした後は宇宙飛行士が内部に入ることが可能です。開発元のRKKエネルギア社は、この点を考慮して「有人」に分類しています。プログレスの主な役割は、ISSへの燃料、水、食料、科学実験装置、その他の消耗品を輸送することです。また、ISSで発生した廃棄物を積み込み、大気圏に再突入させて処分する役割も担っています。

ISSへの補給は通常、年に3～4回行われます。プログレスはISSにドッキングした状態で、次の補給船が到着するまで廃棄物の一時的な保管場所として利用され、ISSの軌道維持のためのリブーストも行います。

開発の背景

プログレスの開発は、長期宇宙ミッションにおける物資補給の必要性から生まれました。宇宙飛行士1人が1日に約30kgの消耗品を必要とすることが判明し、6ヶ月の滞在では5.4トンもの物資が必要になります。これだけの量の物資と宇宙飛行士を、ソユーズ宇宙船の限られたスペースに一緒に搭載することは困難でした。そこで、物資輸送に特化した宇宙船としてプログレスが開発されたのです。

設計

プログレスは、ソユーズ宇宙船とほぼ同じ形状・サイズで、以下の3つのモジュールで構成されています。

1. 与圧された前部モジュール：宇宙飛行士のための補給品（科学機器、衣服、食料、手紙など）が搭載されます。ドッキング機構はソユーズのものと類似しています。
2. 燃料区画：ソユーズの帰還モジュールの代わりに、推進剤と燃料を搭載する区画が設けられています。配管は船外に取り付けられており、万が一漏洩が発生してもステーション内に有毒ガスが流入するのを防ぐ設計となっています。
3. 推進モジュール：宇宙船後部に位置し、自動ドッキング時に使用する姿勢制御エンジンを搭載しています。ドッキング後には、ステーションの軌道維持にも使用されます。

プログレスは無人・使い捨てとして設計されているため、生命維持装置や耐熱シールドが不要で、軽量化されています。また、モジュールを分離する機能もありません。任務を終えたプログレスは、逆噴射して大気圏に再突入し、燃え尽きます。

バージョン

プログレスには、様々な改良が施されたバージョンが存在します。

プログレス：最初のバージョンで、42機が製造されました。貨物積載量は約2,300kgでした。
プログレスM：太陽電池パネルを搭載し、自律飛行期間が延長されました。地球への帰還カプセルも搭載されました。
プログレスM1：推進剤の積載量を増加させたタイプです。
改良型プログレスM：制御システムをデジタル化した改良型です。
* プログレスMS：貨物保護の強化、通信システムの近代化など、さらに改良が加えられた最新バージョンです。

現在の状況

プログレスは、現在もISSへの補給に利用されています。スペースシャトルの退役後、一時的に大量の補給品をISSに運搬できる唯一の宇宙船となりました。長年にわたり、ISSの運用を支える重要な役割を果たしています。

後継機

プログレスの後継機として、パロムという新しい宇宙船が提案されています。パロムは、より大型の貨物をISSに輸送できる能力を持つことが期待されています。

プログレス補給船は、宇宙ステーションへの補給という重要な役割を担い、宇宙開発の歴史に大きな足跡を残しました。今後も、改良を重ねながら、宇宙探査を支え続けるでしょう。

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