ソユーズ6号

1969年、ソビエト連邦は宇宙における多機連携の可能性を探る画期的な試みを実施しました。その中心となったミッションの一つがソユーズ6号です。これは、同時に軌道上に投入されたソユーズ7号、そしてソユーズ8号と連携して運用される、壮大な合同宇宙飛行計画の一部でした。この3機合計で7名の宇宙飛行士が乗り組み、複数の宇宙船が連携して飛行する初の試みとして、宇宙開発史に名を刻みました。

ソユーズ6号には、船長としてゲオルギー・ショーニン宇宙飛行士、そしてフライトエンジニアとしてワレリー・クバソフ宇宙飛行士が搭乗しました。両名にとって、これが初めての宇宙飛行となりました。

このミッションで使用されたソユーズ6号の機体は、質量が6,577kgでした。その軌道は、地球から最も近い地点（近点）が212km、最も遠い地点（遠点）が218kmという、比較的低い高度を周回しました。軌道の傾斜角は51.6度で、地球を一周するのに要する時間は88.8分でした。

ソユーズ6号に課せられた重要な任務の一つは、ソユーズ7号とソユーズ8号が軌道上でランデブーし、ドッキングを試みる様子を高画質ビデオで記録することでした。この撮影によって、将来の宇宙ステーション建設など、複数機による協調作業の基礎となるデータを収集するはずでした。しかし、残念ながらこの目的は達成されませんでした。原因は、ソユーズ7号と8号に搭載されていた自動ランデブーシステムの予期せぬ故障でした。この故障の正確な原因は、現在に至るまで完全に解明されていません。しばしばヘリウムガスを用いた与圧系の問題が指摘されていますが、それだけで3機すべて、あるいは関連システムに広範囲な電子系の異常が発生した理由を説明するには不十分とされています。結果として、ソユーズ7号と8号のドッキングは中止され、ソユーズ6号によるその様子の撮影も行われませんでした。

計画の一部が変更されたにも関わらず、ソユーズ6号の乗組員であるショーニンとクバソフは、宇宙空間における極めて重要な実験を成功させました。それは、宇宙での「溶接」に関する先駆的な研究です。彼らは、真空または低重力環境下で金属を接合する技術の実証を試みました。具体的には、「電子ビーム」「低圧プラズマ放電」「使い捨て電極」という、異なる3種類の溶接方法を搭載された装置を用いて試験しました。この実験装置は、ウクライナのキエフにあるE. O. パトン電気溶接研究所で特別に開発されたものでした。実験後に地球へ持ち帰られたサンプルは、地上で行われた溶接と比較検討されました。その結果、宇宙空間という過酷な環境下で実施されたにも関わらず、溶接された部分の品質は地上で実施されたものと遜色ないレベルであったことが確認され、将来の宇宙での構造物組み立てや修理における溶接技術の実用化に向けた大きな一歩となりました。

ソユーズ6号は、およそ5日間にわたるミッション中に地球の周りを約80周回しました。全ての計画を終えた後、1969年10月16日、カザフスタンのカラガンダ市の北西およそ180キロメートルの地点に無事着陸し、乗組員は地球へ帰還しました。この宇宙船の無線呼出符号は「アンタイオス（Antey）」でした。この名前は、ギリシャ神話に登場する巨人アンタイオスや、当時ウクライナで製造された大型輸送機An-22「アンタイオス」に由来するとされています。また、ロシア語の最初のアルファベットである「A」から始まる名前として選ばれた可能性も指摘されています。

ソユーズ6号のミッションは、計画通りの結果が得られなかった側面もありましたが、特に宇宙溶接という新しい分野で画期的な成果を残し、その後の宇宙開発における技術的基盤を築く上で重要な役割を果たしました。

もう一度検索