ソユーズMS-09

ソユーズMS-09：ISSでの空気漏洩事件の真相

ソユーズMS-09は、2018年6月6日に打ち上げられたソユーズ宇宙船であり、第56次/57次長期滞在の乗組員3名を国際宇宙ステーション（ISS）へ輸送する重要なミッションを担いました。このMS-09は、ソユーズ宇宙船による138回目の有人宇宙飛行にあたります。

乗組員

ロシア人コマンダーとアメリカ人およびドイツ人のフライトエンジニアが搭乗し、宇宙でのミッション遂行にあたりました。

空気漏れ発生と初期対応

2018年8月29日の夜、ISSにて微量の空気漏れが検知されました。調査の結果、軌道モジュールに直径2mmの穴が発見され、それは「低品質なパッチジョブで隠蔽されていた」とされています。緊急措置として、ロシア人クルーはカプトンテープを使用し、一時的な密閉を試みました。その後、エポキシ樹脂を主成分とする修理キットを用いて穴は無事に密閉され、8月31日以降、ISS内の圧力に変化は見られなくなりました。

穴の開いた原因を巡る調査

2018年9月4日、問題の穴がドリルで開けられたものであることが公表されました。しかし、それが事故によるものなのか、意図的な破壊工作によるものなのかは不明確でした。ロシア当局は、軌道モジュールの製造過程におけるサボタージュの可能性を示唆する見解を示しました。中には、NASAの乗組員が穴を開けたという憶測も飛び交いました。

船外活動による外部調査

2018年12月11日、コノネンコとプロコピエフは船外活動を実施し、外部船殻を詳細に調査しました。サーマルブランケットを切断し、断熱材を取り除き、問題の箇所を撮影し、残留物のサンプルを採取しました。穴の位置が、大気圏再突入前に切り離される軌道モジュールにあったため、帰還時の安全性に影響はありませんでした。

帰還の遅延と追加調査

ソユーズMS-10の打ち上げ失敗の影響で、MS-09の乗組員の帰還は、ソユーズMS-11による次のクルーの到着まで延期されました。MS-09は最終的に12月20日の05:03 UTCに着陸しました。

プロコピエフは、ドリル穴が内側から開けられたと述べましたが、穴が開けられた時期は依然として不明です。2019年9月、ロスコスモスのディミトリー・ロゴジン長官は、何が起こったのかを完全に把握しているものの、その情報は公表しない方針を示しました。

論争と憶測

2021年4月20日、ロシアのタブロイド紙モスコフスキー・コムソモーレツは、ヴァディム・ルカシェヴィッチがFacebookに投稿した、セリーナ・オナン＝チャンセラーが穴を開けたとする主張を掲載しました。しかし、この主張はNASAによって否定され、Ars Technicaからは「ばかげている」と評されました。

ソユーズMS-09の空気漏洩事件は、様々な憶測と論争を呼び、宇宙空間における安全管理の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

ソユーズMS-09(55S)のミッション概要 (PDF) (JAXA ISS・きぼう広報・情報センター)

もう一度検索