ソユーズMS-17

ソユーズMS-17：国際宇宙ステーションへの革新的な高速飛行

ソユーズMS-17は、2020年10月14日に打ち上げられた、ソユーズ宇宙船による145回目の有人飛行ミッションです。このミッションの主要な目的は、国際宇宙ステーション（ISS）に第63次および第64次長期滞在の乗組員を送り届けることでした。クルーは、ロシア人コマンダーと、ロシアおよびアメリカ人のフライトエンジニアで構成されました。

画期的な「超高速」ランデブー

ソユーズMS-17の最大の特徴は、ソユーズ宇宙船としては初めてとなる「超高速」2軌道ランデブー飛行計画が採用されたことです。従来のランデブー方式では数日を要していたISSへの到着時間を大幅に短縮し、打ち上げからわずか約3時間後にISSへのドッキングを成功させました。この技術革新は、宇宙飛行の効率性を高める上で重要な一歩となりました。

クルー交代とミッションの継続

2021年3月には、新たなクルーを乗せたソユーズMS-18宇宙船がISSに到着しました。これに伴い、ソユーズMS-17の乗組員は、ソユーズMS-18のドッキングスペースを確保するため、宇宙船をラスヴェットモジュールからポイスクモジュールへ移動させる作業を行いました。その後、ソユーズMS-17はISSを離脱し、地球へと帰還しました。

ソユーズMS-17のミッションは、ISSのロシア軌道セグメント（ROS）の人員不足を回避するという重要な役割も担っていました。当時、スペースX Crew-1にはロシア人宇宙飛行士が搭乗していなかったため、ソユーズMS-17による人員維持はISSの安定運用に不可欠でした。

クルー選定の背景

当初、このミッションにはロシア人宇宙飛行士のニコライ・チュブが第2フライトエンジニアとして搭乗する予定でした。しかし、NASAがソユーズの搭乗権をさらに購入するかどうかの決定を保留したため、計画は一時不透明になりました。その後、NASAが搭乗権を購入し、NASAの宇宙飛行士キャスリーン・ルビンスが第2フライトエンジニアに割り当てられました。

また、当初はアナトリー・イワニシンとイワン・ワグネルがコマンダーと第1フライトエンジニアとして設定されていましたが、ソユーズMS-16の指揮官であるニコライ・チーホノフに医学的な問題が発生したため、彼らが代わりにソユーズMS-16で飛行することになりました。これにより、リジコフとクド＝スヴェルチコフがソユーズMS-17のクルーとして選ばれました。

新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受け、ロスコスモスはメインおよびバックアップのクルーが感染した場合に備え、2名の予備宇宙飛行士を用意しました。これにより、万が一の事態が発生しても打ち上げの遅延を防ぐことが可能となりました。

ソユーズMS-17は、技術的な革新、クルー選定の複雑な背景、そしてパンデミックへの対応など、様々な側面から宇宙開発における重要な出来事であったと言えるでしょう。

もう一度検索