ソユーズTM-12

ソユーズTM-12ミッション

ソユーズTM-12は、ソビエト連邦が運用していた宇宙ステーション「ミール」へ向かった12回目の有人宇宙飛行ミッションです。この飛行は特に、イギリス人として初めて宇宙へ旅立ったヘレン・シャーマン宇宙飛行士が搭乗したことで、国際的な注目を集めました。

参加クルー

打ち上げ時にソユーズTM-12に搭乗したのは、ロシア（当時はソビエト連邦）のアナトリー・アルツェバルスキー宇宙飛行士とセルゲイ・クリカレフ宇宙飛行士、そしてイギリスから参加したヘレン・シャーマン宇宙飛行士の3名でした。アルツェバルスキーとシャーマンはこれが初めての宇宙飛行経験であり、クリカレフにとっては2度目の宇宙滞在となりました。

ミールでの長期滞在を終え、ソユーズTM-12カプセルで地球に帰還したのは、アナトリー・アルツェバルスキー宇宙飛行士、カザフ・ソビエト社会主義共和国（後のカザフスタン）出身のトクタル・アウバキロフ宇宙飛行士、そしてオーストリア出身のフランツ・フィーベック宇宙飛行士でした。アウバキロフとフィーベックも、これが初の宇宙飛行でした。

ミッションの概要と活動

ソユーズTM-12は、ミールへの物資補給とクルー交代を目的とした定期飛行でした。ミールに到着したアルツェバルスキー、クリカレフ、シャーマンの3名は、すでに滞在していたクルーの出迎えを受けました。

ヘレン・シャーマン宇宙飛行士は、「ジュノー計画」と呼ばれるプロジェクトの一環としてこのミッションに参加しました。彼女の専門は化学でしたが、ソビエト連邦側が用意した宇宙での実験プログラムは、生命科学分野に重点が置かれていました。

実施された実験の中には、25万個のパンジーの種子を搭載し、ミールの「クバント2」モジュールにあるエアロック部分に設置して、宇宙空間からの放射線に直接晒すというものがありました。これは、宇宙環境が植物の成長に与える影響を調べるための実験と考えられます。また、シャーマン宇宙飛行士は、地球上にいるイギリスの小学校9校と無線で交信し、子どもたちに宇宙での経験を伝える教育活動も行いました。科学実験としては、「Elektropograph-7K」という装置を用いた高温超伝導に関する研究も実施しています。

宇宙ステーション内での生活について、シャーマン宇宙飛行士は後に、ミールの内部がスターシティにあるガガーリン宇宙飛行士訓練センターの訓練施設と比べて片付いておらず、実験に必要な装置を見つけるのに苦労したと語っています。また、長期滞在クルーのセルゲイ・クリカレフ宇宙飛行士も、自身が初めてミールを訪れた時よりもモジュールが増設され、船内が混雑しているように感じたと述べています。さらに、ミールの外壁に使用されている素材が色褪せていたことにも言及していますが、これは宇宙ステーションの運用に影響を与えるものではなかったようです。

激動の時代背景

ソユーズTM-12は、ミールに約144日間ドッキングして滞在しました。この期間は、ソビエト連邦にとって歴史的な激動の時代と重なりました。ミッション遂行中の1991年8月には、ミハイル・ゴルバチョフ書記長に対するクーデター未遂事件が発生し、ソビエト連邦全体が大きく揺れ動きました。そして、この出来事は、翌1992年1月1日のソビエト連邦の崩壊へと繋がる大きな流れの一部となりました。

宇宙ステーション「ミール」から、地球上の歴史的変化を間近に見守る形となったこのミッションは、単なる宇宙開発の一歩としてだけでなく、地球政治の大きな転換点とも深く結びついた、記憶に残る飛行と言えるでしょう。

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