ソユーズTM-6

ソユーズTM-6ミッション

ソユーズTM-6は、ソビエト連邦の宇宙ステーション「ミール」へ人員を輸送するための6番目のミッションとして実施されました。このフライトは、ミールの長期滞在クルーの交代および、インターコスモス計画に基づく外国人宇宙飛行士の滞在を目的としていました。

特徴的な乗組員編成

ソユーズTM-6の打ち上げ時の乗組員は、ベテラン飛行士であるウラジーミル・リャコフ（3回目の宇宙飛行）が機長を務め、ヴァレリー・ポリャコフ医師（1回目）、そしてアフガニスタン民主共和国出身のアブドゥル・アフド・ムハンマド（1回目）という構成でした。この組み合わせは、当時のソユーズミッションとしては非常に珍しいものでした。

通常、ソユーズ宇宙船には機長とフライトエンジニア、そして研究者や外国人宇宙飛行士が搭乗しますが、このフライトにはフライトエンジニアがおらず、機長のリャホフと、宇宙飛行の経験がない2名の科学者という体制でした。

ミールでの活動と「シャムシャド」計画

ミールに到着後、ヴァレリー・ポリャコフ医師は長期滞在中のウラジミール・チトフ宇宙飛行士とムーサ・マナロフ宇宙飛行士の健康管理および医学的観察をミッションの主要な任務としてミールに残留しました。

一方、アブドゥル・アフド・ムハンマド宇宙飛行士は、インターコスモス計画の一環としてアフガニスタンから参加しました。彼のミッションには、「シャムシャド」と呼ばれる一連の実験プログラムが含まれており、これは主に故国アフガニスタンに関する地球観測や科学実験に焦点が当てられていました。ソビエトのフライトコントロールセンターは、これらの専門的な実験に集中させるため、ムハンマドに宇宙船の操縦やシステム関連の作業を極力させない方針をとっていたとされます。

ソユーズTM-5での帰還と危機

ソユーズTM-6で打ち上げられたリャホフ機長とムハンマド宇宙飛行士は、その後ミールに滞在していたチトフ、マナロフ宇宙飛行士、そしてフランス人宇宙飛行士ジャン＝ルー・クレティエン（2回目）とともにソユーズTM-5に搭乗し、地球への帰還途につきました。ヴァレリー・ポリャコフ医師はミールに残留しました。

しかし、1988年9月5日、地球への大気圏再突入の際に予期せぬ問題が発生しました。ソユーズTM-5のコンピュータソフトウェアとセンサーに異常が生じ、再突入のために必要なロケットエンジンの噴射が途中で停止してしまったのです。

リャホフ機長は直ちに状況を確認し、システムに異常がないと判断して再突入プログラムの再起動を試みました。しかし、エンジンは再び停止しました。地上管制との通信が途絶し、リャホフ機長は地上の指示を待つことを決断しました。

その間、ムハンマド宇宙飛行士は、再突入プログラム自体は停止しておらず、プログラムに従って宇宙船がモジュール分離の段階に移行しようとしていることに気づきました。このままでは、再突入カプセルがまだ軌道モジュールと結合したまま分離され、宇宙空間に放出されてしまう危険性がありました。ムハンマドは迅速にリャホフ機長にこの危険を警告しました。

ムハンマドの警告を受け、分離が実行されるわずか1分前に、リャホフ機長はプログラムを緊急停止させることに成功しました。この機転と連携により、乗組員は最大の危機を回避することができましたが、このトラブルのため彼らの地球への帰還は当初の予定から1日遅れることとなりました。

ソユーズTM-6/TM-5ミッションは、国際協力による宇宙滞在の成果を示す一方で、宇宙開発における予期せぬ困難と、それを乗り越えるための乗組員の冷静な判断と協力の重要性を改めて浮き彫りにした事例として記憶されています。

もう一度検索