ソロモン (ガンダムシリーズ)

宇宙要塞ソロモン：激戦の果てに名を改めた星

宇宙要塞ソロモンは、アニメ『機動戦士ガンダム』をはじめとする数々のガンダム作品に登場する、架空の巨大宇宙構造物です。この要塞は、本来は資源採掘のために小惑星帯から移動させられた天体でしたが、一年戦争が始まる前にジオン公国軍によって軍事用に大規模な改修を受け、強固な宇宙要塞へと生まれ変わりました。一年戦争終結後、地球連邦軍に占領されたソロモンは、「コンペイトウ（Confeito）」と改称され、その後も長期にわたり軍事拠点として運用されました。

一年戦争におけるソロモン

宇宙世紀0079年の激動の一年戦争中、ソロモンは旧サイド1の宙域に位置し、ジオン公国の本国サイド3を防衛する上で欠かせない重要拠点の一つでした。司令官はドズル・ザビ中将が務めていました。戦争末期、宇宙に進出した地球連邦軍の反攻作戦第一段階である「チェンバロ作戦」において、ソロモンは主要な攻略目標とされます。宇宙世紀0079年12月24日からクリスマスの朝にかけて、地球連邦軍のティアンム提督率いる第二連合艦隊との間で、壮絶な大規模攻防戦が展開されました。この時期、ジオン側ではザビ家内部の権力争いが影響し、前線への効果的な戦力投入が妨げられていたとされ、ドズルはこれに対し強い憤りを抱いていたと言われています。

ソロモン攻略戦：チェンバロ作戦の詳細

地球連邦軍は、ジャブローでの防衛に成功した後、宇宙艦隊を再編成し、宇宙要塞ルナツーを拠点としました。総力を挙げた連邦軍は、ティアンム提督指揮下の第二連合艦隊をソロモン攻略へと差し向けます。ソロモンの防衛網は極めて堅固で、要塞砲や衛星ミサイル、多数の浮き砲台が全方位をカバーしており、正面からの突破は困難でした。連邦軍は、太陽光を収束・反射して強力なビームを放つ新兵器「ソーラ・システム」を用いることで、この鉄壁の防衛線を破る作戦を立案しました。

作戦では、ワッケイン大佐率いる第三艦隊（ホワイトベース隊を含む）がサイド4の残骸に潜み、陽動を担当。その他の艦隊で構成される本隊はサイド1の残骸の背後でソーラ・システムの組み立てを極秘に進める計画でした。作戦開始と同時に、陽動部隊から出撃したパブリク戦闘艇が、ミノフスキー粒子を利用したビーム撹乱幕を敷設し、要塞のビーム攻撃を無力化します。多数の犠牲を払いながらも撹乱幕敷設に成功した第三艦隊は、続けてMS部隊を展開し、ジオン軍の注意を引きつけました。ドズル司令官はこれを迎え撃つため、大量のMSを出撃させ、サイド4方面で両軍合わせて1000機以上ともされる大規模MS戦が発生しました。ミノフスキー粒子の影響下でレーダーが機能しない中、この激しい戦闘はドズルの索敵活動を妨害し、連邦軍本隊がサイド1側でソーラ・システムを完成させる時間を稼ぐこととなります。

ソーラ・システムの完成が迫っていることをようやく察知したドズルは、長距離攻撃や主力艦隊の出撃を命じますが、ビーム撹乱幕や残骸に阻まれ、ソーラ・システム破壊は叶いませんでした。ティアンム提督の号令一下、ソーラ・システムから放たれた膨大な光束は、ソロモンの防衛線をなぎ払い、第六スペースゲートとそこに繋留されていた艦隊を一瞬で消滅させました。さらに照射は要塞本体を抉り、ソロモンは設備と部隊に甚大な被害を受けます。壊滅的な打撃を受けながらも、残存したソロモン主力艦隊は連邦軍本隊に突撃。激しい艦隊戦の末、ソーラ・システムの一部を破壊するものの、多数の艦艇が沈没しました。防衛線に大穴を開けられたソロモンに対し、連邦軍第二連合艦隊は一斉に要塞本体へ突入を開始します。

陥落、そしてドズルの最期

連邦軍の要塞内部への侵入を許し、指揮系統も混乱したソロモンは、組織的な抵抗が困難な状況に追い込まれていました。ドズルは要塞の放棄を決断し、残存部隊に撤退を命じると、自身は殿（しんがり）を務めるべく巨大MAビグ・ザムに搭乗し、最後の指揮を執ります。ア・バオア・クー方面へ撤退するジオン艦隊を確認したティアンム提督は、二度目のソーラ・システム照射を指示し、多くの撤退艦艇を撃沈しました。

しかし、ドズルが乗るビグ・ザムは、連邦軍第二連合艦隊に肉薄すると、その巨体とメガ粒子砲で次々と連邦軍艦艇を撃破。旗艦タイタンも沈黙させ、ティアンム提督を戦死させるという局地的な猛反撃を見せました。この猛攻により第二連合艦隊は一時的に混乱に陥ります。だが、救援に駆け付けた第三艦隊のMS隊に包囲され、集中攻撃を受けたビグ・ザムは、ホワイトベース隊のガンダムによって止めを刺され、爆炎の中でドズル・ザビと共に崩れ去りました。この頃、グラナダから派遣されたマ・クベ艦隊がソロモン近辺に到着しますが、すでに戦局は決しており、ドズルの妻子らを乗せた脱出カプセルを収容して撤退するのみでした。

このソロモン攻略戦は連邦軍の勝利に終わったものの、ビグ・ザムの反撃などで宇宙戦艦の半数、MS隊も半数近くを失うなど、連邦軍も少なくない損害を被りました。

陥落後のコンペイトウ

地球連邦軍はソロモンを占領した後、これを「コンペイトウ」と改称し、その後の星一号作戦における重要な足がかりとしました。コンペイトウに集結した連邦艦隊が再編成や設備の修復を行っていた際、ジオン公国軍残党のエルメスによる遠隔攻撃を受け、いくつかの艦艇を失う事件が発生しました。この際にビットを視認できなかった連邦兵の間では、「ソロモンに巣食う悪霊の仕業」と噂されたと言われています。

一年戦争終結後も、コンペイトウは地球連邦軍の重要拠点として機能し続けました。宇宙世紀0083年には、観艦式が開催された際にデラーズ・フリートのアナベル・ガトー少佐によるガンダム試作2号機を用いた襲撃を受け、連邦艦隊の大多数が壊滅するという大損害を被っています。その後のグリプス戦役ではティターンズの拠点の一つとなり、内部の工廠でガンダムTR-1などの機体が開発されました。戦役末期にはエゥーゴや内部抵抗勢力の攻撃により陥落しますが、その後も連邦軍の鎮守府として運用され、第一次ネオ・ジオン抗争や、宇宙世紀0120年代を描いた作品でもその存在が示唆されています。

異なる物語世界におけるソロモン

原作アニメとは異なる展開を見せる小説版『機動戦士ガンダム』では、ソロモンは連邦軍に攻略されず、グラナダが先に陥落します。ドズルはソロモンを無視してア・バオア・クーへ向かう連邦艦隊を追撃し、コレヒドール宙域で壮絶な最期を迎えるという描かれ方をしています。

また、テレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』では、ソロモン攻略戦の描写があるものの、ドズルのビグ・ザムをセイラが撃破したり、占領後の被害がシャアの「赤いガンダム」によるものだったりと、異なった経緯をたどります。さらに、連邦軍がソロモンを月のグラナダへ落下させようとする「第2次ソロモン会戦」が発生し、ジオン軍の核攻撃と「ゼクノヴァ」現象によってソロモンの一部が消失、結果的に休戦協定に至るという、全く異なる結末が描かれています。

数々の激戦を経て、ソロモン、そしてコンペイトウとして、宇宙世紀の歴史に深く刻まれたこの要塞は、物語世界における戦略的な重要性とドラマチックな舞台装置としての役割を果たし続けています。

もう一度検索