ソーシャルツーリズム

ソーシャルツーリズムとは

ソーシャルツーリズムとは、経済的な理由や身体的な制約により、旅行への参加が難しい人々に対して、旅行の機会を提供するための条件を整備する活動、およびその旅行そのものを指します。具体的には、国や地方自治体が、休暇手当の支給、各種割引制度の導入、情報提供、低価格な宿泊施設の整備などを通じて、誰もが旅行に参加できるような環境を整えることを目的としています。

ヨーロッパにおける展開

ソーシャルツーリズムの概念は、第二次世界大戦後のヨーロッパで生まれました。その起源は、戦前のフランスにおける労働運動の結果としての有給休暇制度の確立に遡ることができます。戦争による中断を経て、1950年代後半から1960年代にかけて、政策として活発に議論されました。その結果、年次有給休暇の拡大、各種割引チケットの導入、手頃な価格の宿泊施設や観光施設の整備など、観光政策や労働政策に具体的な形で結実しました。

ソーシャルツーリズムの根底には、「人が人らしく生きるためには、年間を通して連続した休息期間を設け、心身をリフレッシュすることが不可欠である」という思想があります。従来、観光旅行から取り残されていた労働者階級にも、休暇や旅行の権利を認め、その権利を行使しやすくすべきであるという考え方が、ソーシャルツーリズムを推進する原動力となりました。

ソーシャルツーリズムは、大衆が旅行しやすい環境を作ることで、マスツーリズムの普及を促進しました。また、誰もが旅行の機会を持つべきだという理念は、バリアフリーの考え方にも受け継がれています。

日本における展開

日本では、第二次世界大戦後、政府がソーシャルツーリズムを政策課題として取り上げました。1957年には、観光事業審議会の中にソーシャル・ツーリズム研究部会が設置され、その提言に基づいて、国民宿舎、国立青年の家、公営ユースホステルなどの施設が整備されるようになりました。これらの施設は、手頃な価格で宿泊を提供し、より多くの人々が旅行を楽しめるように貢献しました。

ソーシャルツーリズムは、単に旅行の機会を増やすだけでなく、人々の生活の質を向上させ、社会的な包容性を高めるための重要な取り組みです。誰もが旅行を楽しめる社会の実現に向けて、今後もその重要性は増していくと考えられます。

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