ゾルキー

ゾルキー：ソ連が生んだレンジファインダーカメラの系譜

ゾルキー（Zorki, Зоркий）は、1948年から1978年までソビエト連邦で製造されたレンジファインダーカメラのシリーズです。その名前はロシア語で「鋭い視線」を意味し、写真愛好家たちの目に焼き付くような、多様なモデルが展開されました。製造は、S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場（KMZ）が担当しました。

ライカコピーから独自の進化へ

ゾルキーシリーズの初期モデルは、ライカIIの安価なコピーとして登場しました。しかし、時代とともにライカの模倣から脱却し、独自の進化を遂げていきます。特に、シャッター機構には特徴があり、多くのモデルではシャッターチャージ後にのみシャッター速度を設定する必要がありました。この点を無視してシャッター速度を調整すると、カメラにダメージを与える可能性がありました。特に1/30秒以下の低速シャッター速度を使用する際には、注意が必要です。ゾルキー3やゾルキー4では、この点が顕著でした。

主な仕様

ゾルキーシリーズの大部分のモデルは、35mmフィルムを使用し、24×36mm判（ライカ判）の写真を撮影できました。レンズ交換式モデルにはライカLマウントが採用され、多様なレンズを活用できました。

モデル紹介

以下に、ゾルキーシリーズの主なモデルを、発売年順に紹介します。

ゾルキー1 (1948年発売)
ライカIIの完全なコピーモデル。KMZ初の35mmカメラとして登場。インダスター22 50mm F3.5レンズが付属。このレンズは、ライツエルマーに似た沈胴式でしたが、実際にはテッサーのコピーでした。
ゾルキー3 (1951年発売)
ライカIIIを模倣したモデル。スローシャッター機構を搭載。ブライトフレームは非搭載ながら、距離計用とフレーム確認用のファインダーを一体化し、当時のライカよりも先進的な仕様でした。レンズはゾナーコピーのユピテルが搭載されました。
ゾルキー2 (1954年発売)
ゾルキー1の改良モデル。巻き戻し機能、セルフタイマー、取っ手部分を改良しました。
ゾルキー3M (1954年発売)
シャッターダイヤルを一つに集約し、機構を改良することで信頼性を向上させました。
ゾルキーS (1955年発売)
ゾルキー1にシンクロ接点を装備したモデル。
ゾルキー2S (1955年発売)
ゾルキー2にシンクロ接点を装備したモデル。
ゾルキー3S (1955年発売)
ゾルキー3Mにシンクロ接点を装備したモデル。
ゾルキー4 (1956年発売)
ゾルキー3Sにセルフタイマーを搭載したモデル。200万台以上が生産された、シリーズで最も成功したモデル。しかし、セルフタイマーとスローシャッターには信頼性の低さが指摘されました。
ゾルキー5 (1958年発売)
フェド2に似た改良モデル。
ゾルキーミール (1959年発売)
ゾルキー4の低価格モデル。
ゾルキー6 (1959年発売)
ゾルキー5の改良モデル。フィルム裏蓋が蝶番式で開閉可能になりました。
ゾルキー35M (1963年頃試作)
KMZのデザイナー、N・マリエンコフが開発。一眼レフカメラのゼニットEをベースにしたレンジファインダーカメラ。50mmと85mmのファインダー枠、パララックス自動補正を搭載。試作品のみで発売はされませんでした。
ゾルキー4K (1972年発売)
ゾルキー4の改良版で、フィルム巻上げがレバー式になりました。

レンズ固定式モデル

ゾルキーシリーズには、レンズ固定式のモデルも存在します。これらのモデルは、テッサー型のインダスター63 45mm F2.8レンズを搭載しており、最短撮影距離は1.5mでした。

ゾルキー10 (1964年発売)
セレン露出計によるシャッター優先AEカメラ。ソ連初の完全自動式カメラ。ピント合わせはファインダーと独立した連動距離計を使用。ASA/DIN規格を採用しましたが、実際にはGOST規格で販売されたものが多かったようです。
ゾルキー11(1964年発売)
レンジファインダーを搭載しない低価格モデル。

ラピッドフィルム使用モデル

ゾルキー12 (1967年発売)
アグフア・ゲバルトのラピッドフィルムカートリッジを使用したモデル。

ゾルキーの遺産

ゾルキーシリーズは、ソ連のカメラ産業を代表する存在として、歴史に名を刻みました。その多様なモデルは、現代においても多くの写真愛好家たちに愛され、収集されています。レンジファインダーカメラの歴史を語る上で、ゾルキーは欠かせない存在です。

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