ゾンド1号

ゾンド1号：金星探査の悲劇と技術的挑戦

1964年4月2日、ソ連のバイコヌール宇宙基地から、金星探査機ゾンド1号が打ち上げられました。これは、ベネラ計画に続くソ連の野心的な金星探査計画の一環であり、数々の革新的な技術を搭載した探査機でした。しかし、ゾンド1号は金星到達前に通信が途絶えるという、悲劇的な結末を迎えることになります。

ゾンド1号の設計と搭載機器

ゾンド1号は、3MV-1型探査機として知られる設計で、後のゾンド2号、3号、そしてベネラ2号、ベネラ3号といった探査機と姉妹機の関係にあります。直径90cmの球形着陸カプセルには、当時としては最先端の機器が搭載されていました。

具体的には、金星の大気を分析するための化学分析計、地表の組成を調べるための岩石ガンマ線測定器、そして大気圧や温度を測定するための光度計と温度圧力計が搭載されていました。当時の科学者たちは金星の地表についてまだ十分な知識を持っていなかったため、万が一、探査機が水面に着陸した場合に備えて、モーション/ロッキングセンサーも搭載されていました。

打ち上げから通信途絶まで

ゾンド1号は順調に飛行を開始しましたが、搭載機器のセンサー用窓にひびが入っていることが判明しました。このひびから徐々に機体内部の気体が漏れ出し、内部の与圧が失われていきました。

その後、地上からの指令により無線システムの電源が投入されました。しかし、この時、機内に少量の空気が残っていたことが災いし、コロナ放電が発生。電子機器がショートしてしまいました。

事態を重く見たソ連の技術者たちは、故障を免れた着陸カプセル送信機に切り替え、通信の維持を試みました。この切り替えによって、宇宙線や原子状水素の分光計観測データの取得を続けることができました。しかし、1964年5月14日、ついに全通信が途絶えてしまいました。

金星への最接近とその後

通信が途絶えた後も、ゾンド1号は宇宙空間を飛行し続けました。そして、1964年7月14日、金星から約10万kmの位置を通過し、太陽周回軌道に入りました。

ゾンド1号は金星の観測には失敗しましたが、その設計と搭載機器は、後の金星探査計画における重要な礎となりました。また、通信途絶の原因究明は、宇宙探査機における環境制御技術の進歩に貢献しました。ゾンド1号は、成功という結果を残せなかったものの、宇宙探査の歴史において重要な役割を果たした、忘れられない探査機です。

結論

ゾンド1号の挑戦は、金星探査における技術的困難さを浮き彫りにしただけでなく、今後の宇宙探査における信頼性と堅牢性の向上への重要な教訓となりました。この探査機の経験は、後のソ連、そして世界各国の宇宙探査計画に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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