タイタン23G

タイタン23G

使い捨て型衛星打上げロケットである「タイタン23G」（Titan 23G、またはTitan II SLVとしても知られています）は、アメリカ合衆国が運用したタイタン・ロケットシリーズの一員です。その最大の特徴は、新規に開発されたものではなく、既に退役して予備機となっていたタイタンII大陸間弾道ミサイル（ICBM）を、人工衛星を地球軌道へ投入するための輸送手段として再利用・改修した点にあります。この改修作業は、当時航空宇宙産業を担っていたマーティン社によって行われました。主にアメリカ合衆国の政府機関であるアメリカ空軍、アメリカ航空宇宙局（NASA）、そしてアメリカ海洋大気局（NOAA）が、気象衛星や偵察衛星といった様々な種類の人工衛星を宇宙へ運ぶために本ロケットを使用しました。

開発背景と改修内容

タイタンIIミサイルの衛星打上げロケットへの転用プログラムは1986年に開始されました。これは、冷戦構造の変化に伴い余剰となった高性能な液体燃料ミサイルを有効活用することで、コストを抑えつつ衛星打上げ能力を確保しようとする試みでした。

改修にあたっては、ミサイルとしての機能を衛星打上げロケットとしての機能へと適合させるための重要な変更が多数加えられました。特に、ロケットの第二段上部に、人工衛星本体や、ミッションによっては追加される第三段固体燃料ロケットを安全に搭載・固定し、所定のタイミングで分離するための構造が新たに設計・設置されました。また、長期間保管されていたエンジンについても、その信頼性と打上げ時の性能を保証するために精密な点検と調整が実施されました。さらに、正確な軌道への衛星投入を可能とするため、旧式の航法・誘導装置は最新の高性能なシステムに換装されました。

運用実績と機体

改修が完了したタイタン23Gロケットは、1988年に最初の打上げ任務に就きました。その後、本シリーズは2003年に最後のフライトを迎えるまで、合計で13回の打上げミッションを遂行しました。これらの打上げは概ね成功を収め、様々な政府機関の衛星を軌道に送り届けました。

タイタン23Gとして改修対象となったタイタンIIミサイルは全部で14基ありました。しかし、実際に宇宙へ向けて打ち上げられたのは前述の13基に留まります。残りの1基は運用に供されることなく、現在はアメリカ合衆国オレゴン州にあるエバーグリーン航空宇宙博物館に展示されています。これは、ミサイルがロケットへと転用された歴史を示す貴重な実物資料となっています。

機体構造と打上げサイト

タイタン23Gの基本的な構成は、二段式の液体燃料ロケットです。推進剤には、ミサイル時代から引き継がれた自己着火性のある液体燃料（エアロジン50：ヒドラジンと非対称ジメチルヒドラジンの混合物）と酸化剤（四酸化二窒素）が用いられました。この二段構成で多くの低軌道ミッションに対応できましたが、より高高度の軌道や重いペイロードを打上げる際には、追加の推進力を得るために三段目として固体燃料ロケットがオプションで搭載されました。

全てのタイタン23Gロケットの打上げは、アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地のSLC-4W（Space Launch Complex 4 West）発射台から実施されました。この発射台は、元々タイタンIIIBロケットの打上げに使用されていた施設を、タイタン23Gの運用に合わせて改修したものです。全ての打上げ任務をこの一箇所に集約することで、運用の効率化が図られました。13回の全フライトが、ここSLC-4Wから行われました。

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