タイム (出版社)

タイム社の歴史：雑誌出版からメディアコングロマリットへ

タイム社（Time Inc.）は、かつてアメリカ合衆国に存在した、ニューヨークに本社を置く世界的なメディア企業でした。その歴史は、1922年の創刊から、メディアコングロマリットへの成長、そして最終的な売却まで、波乱に満ちたものでした。

創業と雑誌事業の拡大

1922年11月28日、ヘンリー・ルースとブリトン・ハデンの二人の若きジャーナリストによって、タイム社は設立されました。彼らは、アメリカ初の週刊ニュース雑誌『タイム』を創刊し、その後も『フォーチュン』、『ライフ』、『スポーツ・イラストレイテッド』など、数々の著名な雑誌を世に送り出しました。ルースはビジネス、ハデンは編集という役割分担で、タイム社は急速に成長を遂げました。

ルースは、ビジネス雑誌『フォーチュン』（1930年）、写真雑誌『ライフ』（1936年）、スポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』（1954年）など、多岐にわたるジャンルの雑誌を創刊し、メディア帝国を築き上げました。彼はまた、『マーチ・オブ・ザ・タイム』というラジオ番組やニュース映画シリーズも制作し、メディア業界における影響力を増していきました。

1960年代半ばには、タイム社は世界最大かつ最も権威のある雑誌出版社となりました。しかし、ルースの政治的な関与も無視できません。彼は反共主義的な立場をとり、共産主義との闘いを名目に右翼の独裁者を支持するなど、その政治的な見解がメディアに影響を与えたとされています。

合併と分社化

1989年、タイム社はワーナー・コミュニケーションズ社との合併を発表し、メディアコングロマリット「タイム・ワーナー」が誕生しました。しかし、2014年には再びタイム社として分社化され、株式を公開しました。この分社化は、タイム・ワーナーがテレビと映画事業に集中し、タイム社が印刷メディア事業に特化するためのものでした。

メレディスによる買収とその後

2017年、競合するメディア企業メレディス・コーポレーションがタイム社を28億ドルで買収すると発表しました。この買収は2018年1月に完了し、タイム社の歴史に終止符が打たれました。買収後、メレディス社はタイム社の看板を外し、ウェブサイトをメレディス社のものにリダイレクトしました。

買収後、メレディス社はタイム社が所有していた資産の売却を進めました。『タイム』はマーク・ベニオフ夫妻に、『フォーチュン』はタイの実業家チャチャバル・ジアラバノンに、『スポーツ・イラストレイテッド』はオーセンティック・ブランズ・グループに売却されました。また、『マネー』は売却先が見つからず、一時的に印刷版が廃止されましたが、その後オンライン版とともにAd Practitioners LLCに売却されました。

タイム社の経営陣

タイム社の初期には、ヘンリー・ルースがビジネスを担当し、ブリトン・ハデンが編集を担当していました。ハデンの死後、ルースが両方の役割を引き継ぎ、ロイ・E・ラーセンが経営管理を担当しました。タイム社の経営陣は、時代とともに変化し、様々な人物がその舵取りを担ってきました。

主な編集主幹

ヘンリー・ルース（1929年 - 1964年）
ヘドレー・ドナヴァン（1964年 - 1979年）
ヘンリー・グランワルド（1979年 - 1987年）
ジェイソン・マクマナス（1987年 - 1994年）

主な社長

ヘンリー・ルース（1929年 - 1939年）
ロイ・E・ラーセン（1939年 - 1960年）
ジェームス・A・リネン（1960年 - 1969年）
ジェームス・R・シープリー（1969年 - 1980年）
J・リチャード・ムンロ（1980年 - 1986年）
ニコラス・J・ニコラス・ジュニア（1986年 - 1990年）

主な取締役会長

ヘンリー・ルース（1929年 - 1942年）
モーリス・T・ムーア（1942年 - 1960年）
アンドリュー・ハイスケル（1960年 - 1980年）
ラルフ・P・ダビッドソン（1980年 - 1986年）
J・リチャード・ムンロ（1986年 - 1990年）

最高執行責任者

アンドリュー・ハイスケル（1964年? - 1980年）
* J・リチャード・ムンロ（1980年 - 1990年）

タイム・ワーナー時代のタイム社

タイム社は、1970年代から1980年代にかけて、出版事業から多角化を進め、放送やケーブルテレビ事業にも参入しました。しかし、タイム・ワーナーとの合併後は、雑誌事業に特化するようになりました。タイム社の名前は、雑誌部門のみに残り、他の事業は親会社の下で運営されました。

まとめ

タイム社は、その創刊から買収までの間に、アメリカのメディア業界において重要な役割を果たしました。数々の著名な雑誌を発行し、その影響力は計り知れません。その歴史は、アメリカのメディア史を語る上で欠かせない一部と言えるでしょう。

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