ヘンリー・ルース

ヘンリー・ルース：アメリカのメディア界を牽引した出版界の巨人

ヘンリー・ロビンソン・ルース（Henry Robinson Luce、1898年4月3日 - 1967年2月28日）は、アメリカ合衆国の著名な雑誌編集者・出版者です。彼は「当時のアメリカで最も影響力のある民間人」と称され、タイム社を創設し、『タイム』、『ライフ』、『フォーチュン』、『スポーツ・イラストレイテッド』といった数々の影響力のある雑誌を創刊、編集を指揮しました。彼の創刊した雑誌は、ジャーナリズムとアメリカ人の読書習慣を大きく変え、タイム社を世界初のマルチメディア企業へと成長させました。1941年には、「アメリカの世紀」を提唱し、アメリカが世界の覇権を握るべきだと主張しました。

若年期と教育

ルースは、1898年、中国の山東省蓬莱で、宣教師であるヘンリー・ウィンターズ・ルースとエリザベスの息子として誕生しました。幼少期を中国で過ごし、10歳で寄宿学校に入学するために中国を離れました。その後、アメリカへ留学し、コネチカット州のホチキス・スクールに進学。学校内の月刊誌の編集を担当し、生涯のパートナーとなるブリトン・ハデンと出会いました。二人はイェール大学に進学し、学生新聞の編集に携わりました。

キャリア初期

イェール大学卒業後、ルースはオックスフォード大学で歴史を研究し、『シカゴ・デイリーニュース』紙で見習い記者として働き始めました。その後、ハデンと再会し、『ボルチモア・ニュース・アメリカン』紙で共に働きました。

タイム社の設立と成長

1922年、ルースとハデンは、ニュース雑誌のコンセプトを議論し、タイム社を設立しました。1923年3月3日、『タイム』誌の創刊号を発行しました。ルースはビジネスマネージャーとして、ハデンは編集長として、互いに協力し合いながら、タイム社を成長させていきました。ハデンが急死した後、ルースはハデンの後任として編集長に就任しました。

ルースは、1930年にビジネス雑誌『フォーチュン』を創刊し、1936年には『ライフ』をフォトジャーナリズムの週刊誌として再創刊しました。また、ラジオ番組やニュース映画のシリーズを制作し、タイム社は世界有数のメディア企業へと成長を遂げました。

「アメリカの世紀」の提唱

ルースは、1941年に「アメリカの世紀」と題する記事を執筆し、アメリカが世界のリーダーシップを握るべきだと主張しました。彼の提唱は、20世紀におけるアメリカの外交政策に大きな影響を与えました。

政治的立場と影響

ルースは共和党の有力なメンバーであり、強い反共主義の感情を持っていました。彼は『タイム』誌を共産主義との戦いに利用し、右翼の独裁者を支持しました。また、中国国民党の指導者である蔣介石を支援し、アメリカの外交政策に大きな影響を与えました。

私生活と晩年

ルースは、2度の結婚を経験しており、最初の妻ライラ・ホッツとは2人の子供をもうけましたが後に離婚。その後、劇作家のクレア・ブースと再婚しました。彼は多くの慈善活動を支援し、1967年にアリゾナ州フェニックスで亡くなりました。彼の遺産は、ヘンリー・ルース財団に寄付されました。台湾にあるルース記念礼拝堂やイェール大学のヘンリー・R・ルース・ホールは、彼の功績を記念して建てられたものです。

ヘンリー・ルースは、その革新的な発想と強力なリーダーシップによって、アメリカのメディア界に多大な影響を与えました。彼の創刊した雑誌は、現代のジャーナリズムの基礎を築き、その遺産は今日まで受け継がれています。

もう一度検索