タイロン・パワー・シニア

タイロン・パワー・シニア

タイロン・パワー・シニア（Tyrone Power, Sr.）は1869年にロンドンで生まれたイギリス出身の俳優であり、本名はフレデリック・タイロン・エドモンド・パワー（Frederick Tyrone Edmond Power）です。彼は舞台では「タイロン・パワー二世」と名乗ることもあり、主に映画界では「タイロン・パワー」という名で知られています。

家族と初期の人生

タイロン・パワー・シニアは、アイルランド出身の著名な舞台俳優タイロン・パワーを祖父に持ち、尊敬の念から自身もその名前を受け継ぎました。父親はピアニストのハロルド・パワー、母親は女優のエセル・ラヴェニューで、演技の道へ導かれる家庭環境に育ちました。彼はダリッジ・カレッジで教育を受けた後、家族と共にアメリカへ移住します。フロリダの果実園で労働する日々の中で、彼は俳優としての夢を捨てきれず、やがて舞台に立つ決意を固めました。

俳優キャリアのスタート

1886年、タイロンは初めて舞台に立ち、彼の演技キャリアが始まりました。その後、1898年にはイーディス・クレインと結婚し、家庭を持ちますが、1912年に彼の妻が亡くなる辛い出来事が訪れます。その同年、彼はヘレン・ベイトマンと再婚し、1914年には最初の子供であるタイロン・エドモンド・パワー・ジュニアを迎えました。後の名優へと成長するこの子どもは、父の名跡を受け継ぎます。

映画界への進出

パワーはニューヨークでの上演活動を経て、映画界に足を踏み入れます。彼の映画デビュー作は1914年の『Aristocracy』であり、ここから映画でのキャリアが加速していきます。カリフォルニアに移住後には、セリグ・ポリスコープ・カンパニーでの制作に参加し、1915年の『A Texas Steer』など複数の作品に出演しました。

1916年にはユニヴァーサル・フィルム・マニュファクチュアリング・カンパニーと契約し、さらに多くの映画に出演しました。この年、彼の娘アンも映画にノンクレジットで参加するなど、家族の絆が映像作品にも反映されていました。彼が主演した『獄屋の月』や『暗中鬼』は日本でも公開され、彼の国際的な評価を高めました。

私生活と晩年

1921年にはバーサ・ナイトと3度目の結婚を果たします。彼は映画の仕事と並行してブロードウェイの舞台にも立ち続け、俳優としての存在感を発揮しました。1930年に公開された『ビッグ・トレイル』は、彼にとって初のトーキー映画であり、遺作となりました。

残念ながら、1931年12月23日、パワーは心筋梗塞によりロサンゼルスで62歳で亡くなります。彼の俳優人生は決して平坦ではありませんでしたが、その多彩な業績と家族への愛情は、後世に語り継がれています。タイロン・パワーという名は、長男に引き継がれ、この家系は演技と表現の伝統を受け継いでいくことになります。

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