タイ・ハーディン

タイ・ハーディン：西部劇スターから伝道者へ

タイ・ハーディン（本名：Orison Whipple Hungerford Jr.、1930年1月1日 - 2017年8月3日）は、アメリカ合衆国の俳優であり、その長身（188センチ）と精悍なルックスで、主に西部劇やアクション映画で活躍しました。彼の波乱万丈な生涯と、映画界への貢献を振り返ります。

若き日々

ニューヨークで生まれ、テキサス州で育ったハーディンは、幼い頃から演劇に興味を持ちました。1950年代後半、テレビの西部劇ドラマ『ブロンコ』でブロンコ・レーン役を演じ、一躍人気スターとなります。当時の『ブロンコ』は、主人公の早撃ちが評判を呼び、その速さを競うクイズが出題されるほどの社会現象となりました。

ハリウッドからヨーロッパへ

『ブロンコ』での成功を機に、ハーディンは映画界へ進出します。ハリウッドだけでなく、ヨーロッパの映画にも積極的に出演し、国際的な活躍を見せました。1964年には、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』の主人公ジョー役のオファーを受けましたが、これは実現しませんでした。

1960年代中頃からは、多くのハリウッド俳優と同様に、ハーディンもマカロニ・ウェスタンに主演するようになります。アクション俳優としての本領を発揮し、スペインを拠点に、イタリア、スペイン、ユーゴスラビア、西ドイツなど、様々な国の映画に出演しました。初期のマカロニ・ウェスタン作品には、『呪われた谷の男』（1964年）などがあります。

当時、人件費が安価だったスペインでは多くのハリウッド映画が製作されており、ハーディンも『バルジ大作戦』（1965年）や『サヴェージ・パンパス』（1965年）といった作品に脇役として参加しています。『バルジ大作戦』に出演した俳優の多くが、後にマカロニ・ウェスタンに関わっており、ヘンリー・フォンダ、ロバート・ライアン、チャールズ・ブロンソンなどがその例です。

イタリア時代の主演作としては、セルジオ・コルブッチ監督の『太陽の暗殺者』（1967年）や『キング・オブ・アフリカ』（1968年）などが日本でも劇場公開されました。劇場未公開のマカロニ・ウェスタンにも多数出演し、主役から悪役まで幅広い役柄を演じました。マリオ・ガリアッツォやセルジオ・ガローネといった職人監督の作品で、リチャード・ハリスン、クレイグ・ヒル、ゴードン・ミッチェルなどのスターと共演しています。

異色作としては、ローマのチネチッタ・スタジオで撮影されたハリウッド西部劇『最後の反逆』（1970年）があります。南北戦争直後を舞台に、ジョー・ネーマス演じる主人公を追い詰める保安官役をハーディンが演じました。

晩年

アメリカに帰国後、ハーディンはテレビ映画を中心に活動しました。森林火災を題材にしたテレビ映画『大火災』（1976年）は、日本でも劇場公開されています。晩年は、実業家としても活動し、伝道活動を行う傍ら、細々と映画出演を続けました。1989年には、低予算のアクション映画『ボーン・トゥ・キル』に出演しています。

2017年8月3日、タイ・ハーディンは87歳でこの世を去りました。彼の西部劇スターとしての輝きと、映画界への貢献は、多くの人々の記憶に残ることでしょう。

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