タップ (工具)

タップとは

タップは、金属加工において、穴の内側にねじ山を形成するための工具です。おねじのような外観をしており、穴の内壁を回転させながら削り込むことで、めねじを作ります。タップ加工は、旋削やフライス加工、放電加工など他のねじ加工方法と比較して、比較的安価で手軽にめねじを加工できる点が特徴です。しかし、加工中にタップが折れてしまうと、ワーク（加工物）の中に折れたタップが残ってしまい、そのワークが使用できなくなるリスクがあるため、慎重な作業が求められます。

タップの構造

一般的なタップは、先端の「食いつき部」、切りくずを排出する「溝部」、ねじ山を形成する「ねじ部」、機械に取り付けるための「シャンク部」で構成されています。

タップの種類

タップは、溝の形状によって大きく4つの種類に分類されます。

1. ハンドタップ：最も歴史が長く、ストレートな溝が特徴です。切りくずは細かくなり溝に溜まりやすいため、止まり穴と通り穴の両方に使用できます。手作業でのねじ立てに使用されることが多く、3種類のタップ（先タップ、中タップ、仕上げタップ）を順に使用します。幅広い金属加工に適しており、特に刃先強度が強いため、高硬度材の加工にも向いています。

先タップ（1番タップ）：先端が細く、弱い力で切削できます。
中タップ（2番タップ）：穴の中間部を加工します。
仕上げタップ（3番タップ）：穴の最深部までを加工し、最終的な仕上げを行います。

手作業でねじ立てを行う際は、最初に先タップで軽く穴を加工し、次に中タップ（必要に応じて）を使い、最後に仕上げタップで深部までねじを切ります。加工時にタップが傾くとネジが緩くなるため、慎重に作業する必要があります。タップを回す際には、タップレンチやT型タップホルダーなどの専用工具を使用します。

2. スパイラルタップ：螺旋状の溝が特徴で、切りくずの排出性に優れています。止まり穴・通り穴の両方に対応でき、幅広い用途で利用されています。右ねじのタップには右ねじれの溝があり、工具の進行方向とは逆に切りくずを排出します。切れ味が良い反面、進みすぎによるねじ穴の拡大には注意が必要です。溝のねじれ具合によって、加工できる金属の種類が異なり、ねじれが強いほど切れ味が良くなりますが、刃先が欠けやすくなります。軟鋼や炭素鋼、調質鋼、耐熱合金など、様々な金属の加工に対応できるタイプが存在します。

3. ポイントタップ：工具の進行方向に切りくずを排出する溝を持っています。通り穴専用で、切りくず詰まりによるトラブルが少ないため、安定したねじ加工が可能です。ガンタップとも呼ばれます。

4. 盛上げタップ：塑性変形を利用してめねじを形成するタップです。切削を行わないため、切りくずは発生しません。主に、アルミニウム合金や軟鋼の加工に使用されます。めねじの精度は安定しますが、塑性変形で作られたねじの強度が不明確なため、航空機部品など安全性が必要な部品にはあまり使用されません。また、切削タップよりも大きな下穴を必要とし、下穴の精度管理も重要です。ロールタップとも呼ばれます。

5. 管用タップ：管用ねじを切るための専用タップです。平行ねじ用とテーパねじ用があり、それぞれ使用用途が異なります。テーパねじ用は、水道管やガス管など耐密性が求められる箇所に使用されます。ガスタップとも呼ばれます。

タップの材料

タップの材料として最も多く用いられているのは、高速度工具鋼（ハイス）です。ハイス製のタップは、幅広い被削材に対応できます。近年では、超硬合金製のタップも使用されるようになってきており、特に焼入れ鋼や複合材料の加工、アルミニウム合金や鋳鉄の高速加工に向いています。超硬合金製のタップは、ハイス製よりも工具寿命が長く、高速加工時の耐摩耗性に優れています。フライス工具ではサーメット、CBN、単結晶ダイヤモンドなどが使われることもありますが、タップは形状が複雑なため、これらの材料は実用化されていません。

関連事項

ねじ切りダイス：おねじを加工する工具
* 旋盤：回転する工作物に対して工具を移動させて切削加工を行う工作機械

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