タナキル・ルクレア

タナキル・ルクレアについて

タナキル・ルクレア（Tanaquil Le Clercq）は、1929年10月2日にパリで生まれたアメリカのバレエダンサーであり、バレエ指導者、著述家としても知られています。1946年にはバレエ・ソサエティに参加し、1948年にはニューヨーク・シティ・バレエ団（NYCB）のプリンシパルダンサーに昇進。彼女はその優れた音楽性と舞踊技術で、多様なレパートリーを踊りこなし、振付家ジョージ・バランシンの「ミューズ」として一躍有名になりました。しかし、1956年にはポリオを発症し下半身不随となり、短いダンスキャリアを終えることになりました。彼女はまた、バランシンの5番目の妻としても知られています。

生い立ちとバレエの道

ルクレアはフランス人の父とアメリカ人の母のもと、パリで生まれました。父は詩人で大学教授、母はセントルイス出身というバックグラウンドを持っています。彼女の名前である「タナキル」は、ローマの王妃に由来し、通常は「タニィ」と呼ばれていました。家族は彼女が3歳のときにアメリカに移住し、ニューヨークで生活を始めます。バレエを始めたのは7歳のときで、最初はミハイル・モルドキンから教えを受けました。

1941年に入学したスクール・オヴ・アメリカン・バレエ（SAB）で、たまたま審査員を務めていたバランシンに認められ、奨学生としての地位を得ました。その後、彼との関係は深まっていくことになります。バランシンとの最初の出会いは厳しいもので、彼はルクレアに対して深い印象を持たないながらも、彼女の魅力を見逃さず、少しずつ彼女を引きつけていきます。

振付家との関係

1946年にルクレアはバレエ・ソサエティに入団し、すぐにその才能を発揮しました。彼女はバランシンの振付作品に多く関与し、彼の「ミューズ」として特別な位置を占めました。バランシンは彼女にインスパイアされ、数々の作品を創作しました。そんな中で、ルクレアの美しさと技術は、観客や批評家から高く評価されました。

しかし、1956年、彼女はポリオに見舞われ、健康状態が急変します。この出来事は、彼女とバランシンの関係にも影響を及ぼしました。ルクレアは自身のキャリアが断たれ、精神的な苦痛を抱えることになります。

病との闘いと離婚

健康を失ったルクレアはリハビリに専念する中、バランシンとの関係も変化していきます。彼女の状態が続く中で、バランシンは他の若いダンサーに魅了され、新たな恋愛へと発展していきました。最終的に1969年に二人は離婚します。

バランシンはルクレアの生活を常に考慮し、彼女のサポートを続けました。タナキルは離婚後、バレエ界から距離を置き、自らの生活に専念するようになり、その後も指導者として活動を続けました。

晩年と遺産

晩年のルクレアは公の場に出ることが少なくなりましたが、1998年に行われたニューヨーク・シティ・バレエの50周年公演で姿を見せ、観客からスタンディングオベーションを受けました。2000年12月31日に肺炎のため亡くなった彼女。その日はバランシンとの結婚記念日でもあり、多くの人々に惜しまれました。

ルクレアは自伝的な作品を執筆せず、代わりに猫の自伝やバレエに関する書籍を残しました。アートとしてのバレエの深さや、彼女自身の人生の軌跡を伝えるものとなっています。また、その影響はバレエ界の後進に引き継がれています。彼女の生き様は、バレエダンスの美しさと複雑さを象徴するものとして今日でも語り継がれています。

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