タニウツギ

タニウツギ（谷卯木・谷空木）

タニウツギ（学名: Weigela hortensis）は、スイカズラ科タニウツギ属に分類される日本固有の落葉低木です。別名ベニウツギとも呼ばれ、地域によってはタウエバナ（田植え花）とも呼ばれます。これは、田植えの時期に花が咲くことに由来します。名前の通り、山地の谷沿いなどの湿った場所に自生し、梅雨の時期には鮮やかなピンク色の花を咲かせます。

分布と生育環境

タニウツギは日本特産であり、北海道西部、本州の東北地方、北陸地方、山陰地方に分布しています。特に日本海側の多雪地帯に多く、日当たりの良い山地の谷沿いや斜面に見られます。雪崩が頻発するような急斜面では、ブナなどの高木が育ちにくいため、タニウツギのようなしなやかな低木が群生することがあります。群生すると、山一面がピンク色の花で染まり、美しい景観を作り出します。

特徴

形態: 樹高は2 - 5メートルに達する落葉広葉樹の低木です。樹皮は灰褐色で、縦に裂けて剥がれます。若い枝は赤みを帯びており、無毛または短い毛があります。
葉: 葉は対生し、長さ3 - 10 mmの葉柄があります。葉身は長さ5 - 12 cm、幅2 - 6 cmで、卵形、卵形楕円形、長楕円形、または倒卵形をしています。葉の先端は鋭く尖り、縁には細かい鋸歯があります。葉の裏面には白い毛が密生しています。
花: 花期は5 - 7月で、今年伸びた枝の先端や葉の付け根に散房花序を出し、2 - 3個ずつ薄い紅色の花を咲かせます。萼は5つに裂け、花冠は淡紅色の漏斗状で、先が5つに分かれています。花冠の外側の方が色が濃く、蕾の状態ではさらに濃い色をしています。雄しべは5本、雌しべは1本あり、花柱は雄しべよりも長いです。
果実: 果実は10 - 11月に熟す蒴果で、長さ1.2 - 1.8 cm、直径2.5 - 3 mmの細い円柱形をしています。種子は小さく、長さ約1 mmの楕円形で、多数含まれています。冬になっても果実が残っていることがあります。
冬芽: 冬芽は対生し、褐色の卵形で、多数の芽鱗に覆われています。葉痕は三角形または三日月形で、維管束痕は3個あります。

利用

タニウツギは、美しい花を観賞するために、古くから公園や庭園などに植栽されてきました。また、若芽はヨモギの代わりに餅などに入れて食用とすることもあります。

文化

タニウツギは、タウエバナ（田植え花）という別名が示すように、農作業の目安とされてきました。しかし、地域によっては、葬儀の際に骨を拾う箸に木材が使われたり、花が燃えるように美しいことからカジバナ（火事花）、シビトバナ（死人花）、ソウシキバナ（葬式花）などと呼ばれ、忌み嫌われることもあります。

下位分類

まれに、白い花を咲かせるシロバナウツギという品種があります。

シロバナウツギ (Weigela hortensis f. albiflora)

タニウツギは、その美しい姿と多様な文化的背景を持つ、日本の自然を代表する植物の一つです。

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