萼

萼（がく）とは

萼（がく、ガク、蕚は異体字、英: calyx）とは、花において最も外側に位置する、葉のような構造の集合体の名称です。花弁とは異なり、緑色で光合成を行うことが多く、気孔を持つことが特徴です。個々の構成要素は萼片（がくへん、英: sepal）と呼ばれます。

萼の役割

一般的に、萼は開花前のつぼみを保護する役割を果たします。しかし、植物の種類によっては、以下のような多様な機能を持つものもあります。

送粉者の誘引: ガクアジサイのように、目立つ色や大きさで送粉者を誘引する。
果実の発達補助: 花後に発達し、果実の発達を助ける。
種子散布: タンポポのように、花後に発達して種子散布に寄与する。

また、果実に残っている萼は、一般的に「へた」と呼ばれます（例：イチゴ、カキ、トマト）。

萼の特徴

花被片と萼片

花の非生殖的な葉状要素は花被片と呼ばれます。その中でも、花の最外輪に位置し、内側の花被片と異なる色、質、大きさを持つものが萼片です。内側の花被片は花弁と呼ばれ、このように萼片と花弁が区別できる花を異花被花といいます。萼片が集まって萼を形成します。

萼片の配置

萼片の配置や数は種によって決まっており、通常は花の最も外側に一輪で輪生しています。花弁とは互い違いに配列し（互生）、3枚、4枚、または5枚であることが多いです。ただし、ナンテンのように複数輪に配列する例外もあります。

萼の構造

多くの場合、萼は緑色で光合成を行い、気孔を持ちます。また、3本の主脈があるのが一般的です。

さまざまな萼

色彩の変化

一部の植物では、萼片が花弁のように目立つ色彩を持つことがあります。例えば、ヒメウズやオダマキでは、萼片が花弁と同程度、またはより目立ちます。トリカブトでは、外から見える派手な部分は全て萼片であり、花弁は萼片に覆われています。

萼の退化と変化

ユリのように、外側と内側の花被片が類似している場合は、萼片・花弁とは呼ばれず、外花被片・内花被片と呼ばれます。また、花被が1輪しかない花では、目立つ色や大きさであっても、最外輪にあることから萼と呼ばれることが多いです。しかし、これらの花被は、他の花の萼との相同性が必ずしも明らかではないため、花被と呼ぶ場合もあります。

萼の分化

萼の分化は、A遺伝子とE遺伝子の組み合わせによって制御されています。

離片萼と合片萼

萼片がそれぞれ離れているものを離片萼（りへんがく）、萼片が互いに合着しているものを合片萼（ごうへんがく）といいます。合片萼が筒状の場合、萼筒と呼ばれ、先端が裂けている場合は萼裂片と呼ばれます。裂片が小さい場合は萼歯と呼ばれます。

早落萼と宿存萼

開花時に萼が脱落するものを早落萼（そうらくがく）、花後も残るものを宿存萼（しゅくぞんがく）といいます。宿存萼は果実を保護する役割を果たすこともあります。

相称性

萼も花冠と同様に、放射相称（2本以上の対称軸を持つ）と左右相称（1本の対称軸を持つ）があります。一般的に、花冠の相称性に準じます。

距

ツリフネソウ属のように、萼片の一部が袋状になり、距（きょ）を形成することがあります。距には蜜が貯まり、送粉者を選択する役割があります。

副萼

バラ科やアオイ科の一部では、萼の外側にさらに萼状の構造である副萼（ふくがく）が存在します。副萼は、萼とともに開花前の花を保護します。

冠毛

キク科などでは、萼が毛状の構造（冠毛）になり、種子散布を助けます。

まとめ

萼は、花の構造において重要な役割を果たしており、その形態や機能は植物の種類によって多岐にわたります。花の多様性を理解する上で、萼の役割を把握することは不可欠です。

ギャラリー

(画像は省略)

脚注

出典: 福原 達人 (2020) 6-1. 花を構成する要素. 植物形態学. 福岡教育大学. (2021年2月5日閲覧)
出典: 萼に関する記事. 植物Q&A. みんなのひろば. 日本植物生理学会. (2021年2月27日閲覧)

関連項目

花被
花冠
苞

外部リンク

(外部リンクは省略)

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