タマゴテングタケ

タマゴテングタケ（卵天狗茸）

タマゴテングタケ（Amanita phalloides）は、ハラタケ目テングタケ科に分類されるキノコであり、その猛毒性から「死の帽子」（death cap）とも呼ばれています。特に肝臓や腎臓に対する危険性が高く、全世界のキノコ中毒による死者の約90％がこのキノコに起因しています。

形態

タマゴテングタケは中型からやや大型のハラタケ型子実体を持ち、傘の直径は通常5cmから15cmです。このキノコは特有の発生様式を持ち、幼い段階では卵状の構造内で発育し、成長とともにこれを破って現れます。そのため、根元には明瞭なツボ状の部分が残り、典型的な個体では柄の中ほどに膜状のつばがあります。

傘は一般に緑がかった黄褐色で、特に中央部ほど濃色で縁になるほど色が薄くなります。また、傘にはかすり模様が見られ、幼菌では特に顕著です。ひだは密で白色で、柄に対して離れた位置に付着しています。

生態

タマゴテングタケは、主にブナ科の樹木と共生関係を築いており、このキノコは林床から単独または散在的に発生します。外生菌根を形成して栄養や抗生物質のやり取りを行うことが知られています。

分布

本種はヨーロッパ全域に広く分布しており、西はイギリス、南は地中海沿岸地域、北はスカンジナビア半島まで確認されています。また、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでも見られますが、これは元々の宿主樹木とともに持ち込まれたものであると考えられています。特にアメリカの西海岸ではこの種が大量に繁殖し、生態系に大きな影響を与えています。

日本では北部地域で稀に見つかりますが、公式な発見例は少ないものの、標本がいくつか存在します。

人間との関係

タマゴテングタケは強力な毒性を持つことで知られ、特に肝臓や腎臓に対するダメージが大きいです。主要な毒成分はアマトキシンで、これらの毒性ペプチドは加熱しても破壊されません。中毒症状は数時間後に現れ、嘔吐や下痢、筋力低下が起こり、最終的に多臓器不全に至ることが多いです。

診断と治療

中毒を疑った場合、早期の診断と適切な治療が求められます。アマトキシン中毒の解毒剤は未だに確立されておらず、ペニシリンやアセチルシステインなどの薬剤が研究されています。日本では、血液透析や活性炭の投与などが行われています。

中毒事例

誤食による中毒事故が多く報告されており、世界中で死亡例が存在します。特に2023年にはオーストラリアでこのキノコを用いた毒殺事件が起きました。

類似種

タマゴテングタケに類似した毒キノコもあり、誤食のリスクが高いです。中でも、コタマゴテングタケやタマゴタケモドキなどは外見が似ており、注意が必要です。キノコを採取する際には慎重に同定を行い、十分な知識をもって行動することが重要です。

タマゴテングタケはその危険性と美しい外観の両方を持つため、見かけた際には充分な注意が求められます。

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