タラスク

タラスク：フランスに伝わる伝説の怪物

タラスク（フランス語: la Tarasque）は、フランス南部タラスコン市に伝わる伝説上の竜、または怪物です。その起源は古く、ローヌ川沿いの森林地帯に出没し、人々に危害を加えていたと伝えられています。しかし、聖女マルタの出現により、タラスクは鎮められ、退治されたとされています。この伝説は、フランス南部プロヴァンス地方のみならず、スペインなどにも広まり、今日に至るまで様々な形で語り継がれています。

伝説の概要

タラスクの伝説は、12世紀に遡ると言われています。聖女マルタが中東の聖地からタラスコン市を訪れた際、人々を苦しめていたタラスクに出会いました。マルタは祈りと聖水を用いてタラスクを鎮め、町まで連れて行き、最終的に住民によって退治されたとされています。

この伝説は、『黄金伝説』（13世紀）にも収録されており、広く知られるようになりました。同書によれば、タラスクは半獣半魚の姿をしており、獅子のような頭、亀の甲羅、熊のような爪を持つ6本の足、そして蛇のような尾を持っていたとされています。

文化遺産としてのタラスク

タラスクは、タラスコン市の紋章や代用貨幣にも描かれており、その存在は地域文化に深く根ざしています。また、タラスクを模した山車が街を練り歩く祭典は、1474年から続く伝統行事であり、現在では6月の最終週末に開催されています。

図像学

タラスクの図像は、時代とともに変化してきました。初期の図像では竜の姿で描かれることが多かったものの、15世紀頃から亀の甲羅を持つ独特の姿が定着しました。聖女マルタがタラスクを鎮める場面や、タラスクが人を飲み込む姿が描かれることもあります。

祭典

タラスクの祭典は、ルネ王によって1474年に始められたと伝えられています。かつては、タラスクを模した山車の中に人が入り、街を練り歩いていましたが、近年では張りぼてを台車に乗せて、数人が牽引する形に変わっています。

伝説の詳細

黄金伝説

『黄金伝説』によれば、タラスクはガラティアで生まれた生物であり、聖書の巨獣レヴィアタンとオナクスという怪物の交配によって生まれたとされています。ローヌ川に潜み、人々や船を襲っていたタラスクに対し、聖女マルタは聖水を振りかけ、おとなしくさせた後、町まで連れて行き、住民によって退治させました。

その他の文献

タラスクの伝説は、『黄金伝説』以外にも、《偽マルケラ》やヴァンサン・ド・ボーヴェーの『歴史の鏡』など、様々な文献に収録されています。これらの文献は、タラスクの外見や聖女マルタとの出会いについて、それぞれ異なる描写を加えています。

タラスクの外見

タラスクの外見は、文献によって異なりますが、一般的には獅子のような頭、亀の甲羅、熊のような爪を持つ6本の足、そして蛇のような尾を持つとされています。また、毒の息を吐くとされることもあります。

タラスクの図像

紋章や貨幣

タラスクは、タラスコン市の紋章に古くから使用されており、人を飲み込む姿で描かれることが多いです。また、代用貨幣にもタラスクの図像が用いられています。

建築物

タラスクを描いた図像は、建築物にも見られます。タラスコンのサント・マルト教会には、タラスクが人間を飲み込む姿をかたどった塑像が残されています。

タラスクの祭典

起源

タラスクの祭典は、1474年にルネ王の命によって始められたと伝えられています。聖女マルタの奇跡を再現し、民衆を楽しませることを目的としていました。

近年の様子

近年では、タラスクの山車が街を練り歩き、聖女マルタに扮した女性が山車をエスコートする様子が見られます。また、祭りの間には、伝統的な歌や踊りが披露されます。

スペインにおけるタラスカ

スペインでは、タラスクはタラスカと呼ばれ、聖体の行列に登場します。タラスカの上には、聖書や史実上の傾城の美女を象徴する女性像が飾られることが特徴です。

タラスクに関する学説

ケルト起源説

タラスクの起源は、キリスト教化以前のケルト宗教的な獣神崇拝にあるという説があります。この説を支持する研究者は、タラスクの図像や伝説に、ケルト文化の影響が見られると指摘しています。

タラスクは、単なる伝説上の怪物ではなく、地域文化や歴史を反映した存在です。その姿や伝説は、時代とともに変化し、様々な形で語り継がれてきました。タラスクの祭典は、地域住民にとって重要な文化的なイベントであり、その伝統は今後も受け継がれていくことでしょう。

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