代用貨幣

代用貨幣とは

代用貨幣とは、硬貨の代わりとして限定的に使用されるものの総称です。多くは硬貨やメダルに似た形状をしていますが、布や穀物などがその役割を担ったこともあります。英語では「トークン（token）」、フランス語では「ジュトン（jeton）」と呼ばれ、収集家の間ではメダル類収集の一分野として知られています。

材料と発行主体

代用貨幣の材料は、銅、白鑞、アルミニウム、真鍮、スズなどの卑金属や、フェノール樹脂、皮革、陶磁器など、耐久性のある様々な素材が用いられます。硬貨が国や政府によって発行される法定通貨であるのに対し、代用貨幣は民間企業や団体、個人によって発行されるのが一般的です。ただし、国家や州政府が通貨に準ずるものとして認める場合もあります。有名な例としては、1874年に南アフリカでストラッチャン社が発行し、先住民の間で広く流通した代用貨幣が挙げられます。

代用貨幣の種類

代用貨幣は、その目的や用途によって様々な種類があります。

商品券・乗車券としての役割: 商品券や乗車券のように、特定のサービスや商品と交換できる代用貨幣があります。
通貨としての役割: 政府発行の硬貨不足を補うために、地方銀行などが通貨として代用貨幣を発行することがありました。例えば、オレンジ自由国のグリカランドイースト地域で発行されたストラッチャントークンは、地域の通貨として公認されていました。また、インフレ時に電話用トークンが通貨の役割を果たした例もあります。
売買・交換手段としての役割: 17世紀から19世紀にかけて、政府発行の硬貨が不足した際に、商人が代用貨幣を発行しました。これらの代用貨幣は、必ずしも換金可能ではなかったものの、商品と交換できる保証として広く流通しました。
スロットマシンのトークン: カジノでは、スロットマシン専用のトークンが使用されます。これらのトークンはカジノ内で換金できますが、一般的にはカジノ外では価値を持ちません。
スタッフトークン: 企業や団体が従業員に賃金の代わりに支給するトークンです。かつては、従業員が特定の店舗でしか利用できないなど、不当な労働条件に利用されることもありました。
ハンセン病療養所で使用された代用貨幣: ハンセン病療養所では、入所者の資産を療養所内でのみ使用できる代用貨幣に強制的に両替させていました。
その他: 公共交通機関の乗車券や、有料道路の通行料金、小売店や酒場などが発行するトークン、洗車場、ゲームセンター、駐車場、公衆電話など、様々な場面でトークンが利用されています。

代用貨幣の歴史

代用貨幣は、歴史の中で様々な役割を果たしてきました。

イギリスにおける代用貨幣

17世紀のイギリスでは、内戦による硬貨の製造中断により、小銭が著しく不足しました。そのため、地方公共団体や商人が代用貨幣を発行し、不足を補いました。これらの代用貨幣は、銅や真鍮製が多かったものの、白鑞や革製のものも存在しました。また、18世紀後半にも、王立造幣局の硬貨製造が停滞した際に、商人が再び代用貨幣を発行しました。これらの代用貨幣は「コンダートークン」として知られています。

アメリカにおける代用貨幣

アメリカでは、南北戦争時に硬貨が不足したため、ボール紙や私製の銅貨、切手を利用した代用貨幣が発行されました。また、在外米軍向けには、紙製の代用貨幣「ポグ」が発行されました。1870年から1920年頃には、農村地域での零細店舗の増加に伴い、取引用代用貨幣の使用が盛んになりました。

スロットマシントークンとカジノ

アメリカでは、1964年頃に銀貨の発行が停止された際、ラスベガスのカジノがスロットマシン用の代用品としてトークンを導入しました。その後、1ドル硬貨の変更に伴い、多くのカジノがトークンを使用するようになりました。現在では、コインレスマシンの導入が進み、トークンの使用は減少傾向にあります。

代用貨幣の収集

代用貨幣の収集は、メダル収集の一分野として楽しまれています。取引用代用貨幣、トランジットトークン、ケース入りのセント硬貨など、様々な分野があります。特に、商人が発行した代用貨幣は、歴史的な背景や地域性を知る上で興味深い対象です。表面に刻まれた額面、商人名、イニシャル、町、州などの情報から、当時の経済状況や社会情勢を垣間見ることができます。

まとめ

代用貨幣は、硬貨の代替として様々な場面で利用されてきました。その歴史は長く、硬貨不足やインフレなど、社会的な出来事と密接に結びついています。代用貨幣は、単なる代替品としてだけでなく、その多様な形状や素材、デザインから、歴史や文化を語る貴重な資料としての側面も持っています。


関連項目
貨幣史
トラック・システム
通貨類似物収集
ウッデンニッケル

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