タラフマラ族

タラフマラ族（ララムリ）：驚異的な走力を持つメキシコの先住民族

タラフマラ族、またはララムリは、メキシコ北西部、主にチワワ州の西シエラ・マドレ山脈に居住する先住民族です。彼らは、驚異的な長距離走の能力を持つことで世界的に知られています。ララムリという言葉は、タラフマラ語で「走る人々」を意味するとも解釈されています。

歴史

16世紀にスペイン人が到来する以前から、タラフマラ族は西シエラ・マドレ山脈の峡谷地帯に暮らしていました。スペインの植民地化が進むにつれて、彼らは銅山での労働を強いられ、奴隷狩りの対象となりました。

17世紀にはイエズス会が布教活動を開始しましたが、タラフマラ族は抵抗を続けました。1648年にはスペインとの間で戦争が勃発し、その後も断続的に紛争が続きました。18世紀にはイエズス会が追放され、フランシスコ会が布教を引き継ぎましたが、その影響力は限定的でした。

文化

生活

タラフマラ族の多くは、伝統的な生活様式を維持しています。彼らは、木や石でできた簡素な小屋に住むほか、洞窟や岩陰などの自然のシェルターを利用することもあります。主な作物はトウモロコシや豆ですが、牛、羊、ヤギなどの家畜を飼育する遊牧民も存在します。多くのタラフマラ族は、季節に応じて移牧を行います。

言語

タラフマラ語は、ユト・アステカ語族に属する言語です。スペイン語の影響を受けて衰退しつつありますが、現在も広く話されています。タラフマラ語で男性はララムリ(rarámuri) 、女性はムキ(mukí)と呼ばれます。

脅威

近年、タラフマラ族は森林伐採、鉱山開発、麻薬取引などの脅威に直面しています。彼らの土地は、鉱物資源の採掘を目的とする企業や、麻薬カルテルによって脅かされています。森林伐採は、彼らの生活基盤を破壊し、生態系に深刻な影響を与えています。

宗教

タラフマラ族は、伝統的な宗教観念を持ちながら、カトリックの影響も受けています。彼らは、幻覚性のサボテンであるペヨーテを「ヒクリ」と呼び、神聖なものとして崇拝しています。

音楽と祭り

タラフマラ族の音楽は、太鼓や笛などの伝統的な楽器を用いて演奏されます。彼らは、祭りや儀式の際に音楽を奏で、歌い、踊ります。テスグイーノと呼ばれるトウモロコシを発酵させた酒は、祭りや共同作業の際に重要な役割を果たします。

優れた運動能力

タラフマラ族は、驚異的な長距離走の能力を持つことで知られています。彼らは、ワラーチと呼ばれるサンダルを履いて、山岳地帯を何十キロも走り続けます。彼らの走力は、幼い頃から自然の中で鍛えられ、伝統的な生活様式によって培われたものです。

食事

タラフマラ族の食生活は、トウモロコシ、豆、カボチャなどの農産物を中心としています。彼らは、これらの食材をシンプルに調理し、栄養価の高い食事を摂っています。また、山菜やキノコなどの自然の恵みも利用しています。

近年のララムリ

著名なララムリ

アルヌルフォ・キマーレ：1996年にロサンゼルスで開催された160kmの山岳レースで優勝したララムリのランナーです。
ダニエル・ポンス・デ・レオン：元WBOジュニア・フェザー級のチャンピオンです。

ララムリを題材とする放送

NHK「天空を駆ける民 ララムリ」(2020年)
TBS 世界ふしぎ発見！走る民族の秘密(2010年)

参考文献

「BORN TO RUN〜走るために生まれた」（NHK出版）
『タラフマラ』アントナン・アルトー

タラフマラ族は、厳しい自然環境の中で独自の文化を守りながら、驚異的な走力を持つ民族です。彼らの歴史、文化、そして現代社会との関わりを知ることは、多様な文化への理解を深める上で貴重な機会となるでしょう。

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