タンクレーディ (シチリア王)

タンクレーディの生涯と治世

タンクレーディ（Tancredi, 1139年 - 1194年2月20日）は、シチリア王国ノルマン朝の第4代国王です。彼は初代国王ルッジェーロ2世の庶子として生まれ、1189年から1194年まで在位しました。

初期の経歴

タンクレーディは、従弟のグリエルモ2世が治めていた時代、レッチェ伯として軍司令官を務めました。1174年にはエルサレム王アモーリー1世の要請に応じ、大規模な軍を率いてエジプトのアレクサンドリアを包囲しましたが、アモーリー1世の死とサラディンの急速な出動により、包囲は失敗に終わりました。また、1185年には東ローマ帝国への遠征を試みましたが、こちらも成功せず、彼の軍は敗退しました。

王位継承と即位

1189年にグリエルモ2世が病死し、次の国王の候補には彼の姪コスタンツァとその夫、神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世が挙げられました。しかし、シチリアの住民は外国の支配を拒否し、タンクレーディが推薦された結果、彼は国王として即位しました。1190年1月18日、タンクレーディは壮大な戴冠式を行い、彼の即位を支えたダジェッロを尚書に任命しました。

内外の難題

タンクレーディの即位は賛否が分かれ、反対派貴族による反乱やハインリヒ6世の侵略が待ち受けていました。1190年、アンドリア伯ルッジェーロが反乱を起こし、ハインリヒ6世の援助を求めます。しかしタンクレーディは賢くも皇帝の軍を阻止し、ルッジェーロを捕らえて処刑し、即位直後の危機を乗り越えました。

一方、第3回十字軍がメッシーナに接近する中、タンクレーディはイングランド王リチャード1世とフランス王フィリップ2世と関係を持ちましたが、リチャードの妹であるジョーンの扱いを誤り、彼女の財産を押収してしまったことで、リチャード1世からの報復を招いてしまいます。リチャードはメッシーナを占拠し、タンクレーディは賠償金と親族婚を約束することで和解を迫られ、軍事的な支援を得ました。

続く困難

1191年4月、十字軍がシチリアに滞在している間に神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世の脅威が迫ってきます。タンクレーディは彼を撃退しつつ、コスタンツァを捕らえましたが、1193年に長子のルッジェーロが死去してしまいます。さらにタンクレーディ自身も1194年に病により逝去しました。

タンクレーディの死後

彼の死後、国王の座は次男のグリエルモ3世に引き継がれましたが、彼が幼かったため統治はうまく運ばず、再度侵攻してきたハインリヒ6世によってパレルモは陥落しました。これにより、王国はノルマン朝からホーエンシュタウフェン朝へと変わる運命を辿りました。

家族

タンクレーディは、アチェッラ伯リッカルドの姉妹シビッラと結婚し、彼は以下の子どもを持ちました：

• - ルッジェーロ3世（シチリア王、父と共治）
• - グリエルモ3世（シチリア王）
• - マリア・アルビナ（レッチェ女伯）
• - コスタンツァ（ヴェネツィアのドージェと結婚）
• - ヴァルドラーダ（ベネツィアのドージェと結婚）
• - メダニア

タンクレーディの治世は波乱に満ちたものだったが、彼の政治手腕と軍事的挑戦は今日でもシチリアの歴史の中で重要な位置を占めています。

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