タンタアレグリア

タンタアレグリア：歓喜と苦悩の競走生活

2012年生まれの競走馬、タンタアレグリア。「たくさんの喜び」を意味するその名にふさわしく、華々しい勝利と、惜しまれるほどの故障という、光と影の両面を併せ持った生涯を送った。一口馬主によって3000万円で募集されたサラブレッドは、2014年7月に福島競馬場でデビュー。初勝利は3戦目、東京競馬場での未勝利戦だった。続くホープフルステークスでは重賞初挑戦も7着に終わり、潜在能力の高さをうかがわせるデビューとなった。

2015年には、クラシック戦線に挑む。ゆりかもめ賞で2着、大寒桜賞で2勝目を挙げ、青葉賞での好走により東京優駿（日本ダービー）への優先出走権を獲得した。名手・蛯名正義騎手が21年連続、通算23回目のダービー挑戦で鞍上を務めたが、結果は7着。しかし、直線で勝負圏外にいるにもかかわらず実況アナウンサーが「タンタアレグリア蛯名！」と絶叫する場面があり、大きな注目を集めた。

その後は菊花賞、天皇賞（春）とG1レースで善戦するも勝利には届かず。しかし、2017年、8ヶ月半の休養明けを迎えたアメリカジョッキークラブカップで、ロスなく内を立ち回り重賞初制覇を飾った。この勝利は、蛯名騎手にとって武豊、岡部幸雄に次ぐ歴代3位となる26年連続の重賞制覇という記録を樹立する快挙でもあった。

しかし、喜びは長く続かなかった。天皇賞（春）を目指した調整中に骨瘤を発症し、再び戦線を離脱。復帰後も左トモの不安を抱え、ジャパンカップを回避。その後、左後肢の骨折が判明し、長期休養を余儀なくされる。

2019年、1年10ヶ月ぶりの復帰を目指し調整が進められていたが、7月3日の調教中に左後肢の複雑骨折を発症、安楽死の処置がとられた。

タンタアレグリアの血統も注目に値する。母はチリ産馬のタンタフエルサで、チリG1レースを含む重賞4勝を挙げた名牝。半姉のパララサルーもオープン特別2勝を含む4勝を記録している。

短くも激しい競走生活を送ったタンタアレグリア。その生涯は、多くのファンに深い感動と、惜別の思いを残した。幾多の困難を乗り越え、掴んだ重賞勝利は、まさに「たくさんの喜び」を象徴するものであったと言えるだろう。その輝かしい走りと、惜しまれる早すぎる最期は、競馬史に深く刻まれることとなった。

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