タンナトリカブト

タンナトリカブト（耽羅鳥兜）

タンナトリカブト（学名：Aconitum japonicum subsp. napiforme）は、キンポウゲ科トリカブト属に分類される多年草で、有毒植物として知られています。この植物は、ヤマトリカブトを分類上の基本種とする亜種群の一つであり、別名サンインヤマトリカブトとも呼ばれます。

分布と生育環境

タンナトリカブトは、本州の近畿地方西部以西、中国地方、四国、九州、そして朝鮮半島や中国大陸東北部にかけて広く分布しています。主に低地や山地の林縁、林内などのやや湿った場所に生育しています。中国地方、四国、九州では比較的よく見られるトリカブト属の植物ですが、ヤマトリカブトの亜種群の中では比較的少ない種類です。

特徴

タンナトリカブトは、地下に直径1-2cmほどの塊茎を持ちます。茎は直立または斜めに立ち上がり、高さは15cmから150cm程度までと、生育環境によって大きく変動します。茎の上部には短い毛（屈毛）が生えているのが特徴です。

葉は五角形または五角形状の円形で、長さは4cmから14cm、幅は4.5cmから16cm程度です。葉は3つに深く切れ込んでおり（3全裂からまれに3深裂）、それぞれの裂片はさらに細かく羽状に裂けています。最終的な裂片は披針形または卵形で、縁には粗い鋸歯があります。

花期は9月から11月にかけてで、花序は長さ4.5cmから9cmの散房状、総状、または円錐状になります。一つの花序には2個から8個ほどの花が咲きます。花柄は長さ3cmから7cmで、全体に屈毛が密生しています。

花は長さ30mmから45mmで、濃い青紫色から菫色をしていますが、まれに白い花を咲かせることもあります。花弁のように見える部分は萼片で、外側には屈毛が生えています。萼片は上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の計5個から構成されています。特に、かぶと状になる上萼片は、僧帽形で前方の嘴が長く尖るか、または背の高い円錐形で前方の嘴が短くなります。花弁は上萼片の中に隠れて見えませんが、柄、舷部、蜜を分泌する距、唇部で構成されています。距は細く長く、180度以下に曲がっています。

雄蕊は無毛で、雌蕊は3個から5個あり、通常は無毛ですが、まれに屈毛が見られることもあります。果実は長さ8mmから13mmの袋果で、直立します。染色体数は2n=32で、4倍体種です。

名前と分類

和名の「タンナトリカブト」は、「耽羅鳥兜」に由来します。「耽羅」は韓国の済州島の古い呼び名であり、この植物のタイプ標本が済州島で採集されたことにちなんでいます。

亜種名「napiforme」は、「カブラ形の」「扁球の」という意味を持ちます。

タンナトリカブトは、ヤマトリカブトとその亜種群とともに、トリカブト属トリカブト亜属のキヨミトリカブト節に分類されます。この節は、花弁の舷部が距に向かって膨らむという特徴を持ちます。さらに、タンナトリカブトは、花が通常花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列に分類されます。

類似種との比較

ヤマトリカブト列に属する日本の温帯に生育する種としては、ヤマトリカブトの他に、ヤサカブシ、コウライブシ、ウゼントリカブト、オンタケブシ、カワチブシなどが挙げられます。これらの種は、葉の形、花柄や萼片の毛の有無、上萼片の嘴の形状などによって区別されます。

ヤマトリカブト：花柄と上萼片に屈毛が生える。
ウゼントリカブト、オンタケブシ：葉が腎円形で3浅裂-中裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴が短い。
コウライブシ：葉が五角形で3全裂-深裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴が長い。
カワチブシ：花柄と上萼片が無毛。

オンタケブシは分布が限られた稀な種であり、ヤサカブシは山口県にのみ分布する種です。

注意

タンナトリカブトは有毒植物であるため、誤って口にしないように注意が必要です。特に、子供やペットがいる家庭では、十分に注意してください。

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